戦車じゃないけど超巨大「99式自走155mmりゅう弾砲」ほぼ北海道のみの激レア装備 どう使う?

99式自走155mmりゅう弾砲を西日本で見かけないワケ

 また車内には自動装填装置を搭載しているため、高い発射速度を誇るとともに省人化にも成功しています。牽引式の155mmりゅう弾砲FH70の場合、操作人員が8名程度必要なのに対して、99式は乗員4名で動かすことが可能であり、比較すると半分の人員で運用できることがわかります。また、車内へ砲弾や装薬を補充する場合も、車体後方に取り付けられた給弾装置を使うことで、ほぼ自動で車外から行うことができます。

 ちなみに、現在、陸上自衛隊が配備を進めている最新の19式装輪自走155mmりゅう弾砲の砲身は、コスト削減を目的として99式自走155mmりゅう弾砲の物を流用しています。

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東千歳駐屯地記念行事での一コマ。これだけの99式自走155mmりゅう弾砲が一堂に会するシーンは北海道でしか見られない(武若雅哉撮影)。

 99式自走155mmりゅう弾砲は、ドイツ製のPzH2000に勝るとも劣らないほど高性能な自走砲ですが、本州から南ではほぼ見ることができません。その理由は、これまで製造された約140両中、およそ130両が北海道に配備されているからです。

 では、なぜ北海道に集中しているのでしょうか。そのワケは、旧ソ連(現ロシア)と対峙してきた自衛隊の歴史があるからです。陸上自衛隊は冷戦期には常にソ連の脅威に備えてきました。そのため、戦車部隊を数多く配備し、いつでも北海道を守り抜くことができるようにしていたのです。

 しかし、地上戦は戦車だけで完結することができません。戦闘の最前線に立つ戦車などの戦闘を火力支援する自走砲も非常に重要な役割を持っているのです。そこで集中的に配備されたのが、戦車の動きにも追従することができる99式自走155mmりゅう弾砲だったのです。

 なお、残る10両程度は、教育用として静岡県の富士駐屯地や茨城県の土浦駐屯地などに配備されているため、それ以外の地域、とくに西日本では見ることがまずありません。北海道の部隊が演習などで九州の演習場などに長駆「遠征」すれば別ですが、運用する実動部隊は事実上、北海道にしかいないため、そこに行かないと見ることができないレア装備といえるでしょう。

 そのような99式自走155mmりゅう弾砲ですが、実射シーンを含めて動き回る姿を見ることができる機会が間近に迫っています。それは、5月28日に開催される予定の「富士総合火力演習」。この演習は、インターネットでライブ配信されるため、富士駐屯地に所在する特科教導隊の99式が陣地進入から射撃して離脱するまでの様子を惜しげもなく見ることが可能です。

 複数個所に配置された地上カメラに加え、ドローンによる空撮などからなるマルチアングルで、自宅に居ながらにして圧倒的な重厚感を間近に感じ取ることができます。「おうち総火演」で是非、レア装備の99式自走155mmりゅう弾砲の動く姿を堪能しましょう。

【了】

【富士山めがけドーン!】99式自走155mmりゅう弾砲の射撃シーンほか

Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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  1. 時速約50キロ/通常弾射程30キロ/連射18発以上(3分)/ほか12.7mm重機関銃M2x1基。