ウクライナ「空飛ぶ砲兵隊」に「SUV砲兵隊」も!? 西側供与のM777榴弾砲 使い勝手抜群なワケ

空から神出鬼没に展開 陸からも?

 アメリカ軍がM777を導入したのには、もうひとつの理由がありました。以前のM198は前出したように重量が約7tもあるため、CH47「チヌーク」輸送ヘリコプターまたはCH-53E「スーパースタリオン」などの大型輸送ヘリコプターでなければ運ぶことができませんでしたが、軽量のM777ならばそれよりもずっと小さなUH-60「ブラックホーク」多用途ヘリコプターでも輸送可能です。

 より小型で小回りが利き、なおかつ運用する機数や部隊も多い多用途ヘリコプターで運べるとなると、運用上の柔軟性が増し、加えて自走砲と比べて牽引砲の弱点ともいえる移動・展開・撤収が、空中機動によって短時間化・簡便化を図ることができるようになります。

 このメリットは、ゲリラや民兵が相手となる、いわゆる「非対称戦」と呼ばれる戦いにおいて、神出鬼没な敵を捕捉・攻撃するうえで自走砲よりも大きなメリットになるといえるでしょう。

 しかし、ウクライナ軍はアメリカ軍のようにヘリコプターを潤沢に持っているわけではないので消耗品の砲弾の補給が困難です。しかも、ヘリコプターが安全に飛べるための制空権も獲得していないので、空中機動そのものが危険です。しかもロシア軍はゲリラや民兵とは違って、戦闘機を筆頭に各種対空ミサイルなど強力な対ヘリコプター(対空)兵器を多数装備しています。

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M777榴弾砲が用いるNATO規格の口径155mm砲弾(画像:ウクライナ軍参謀本部)、

 なので、このような特徴を備えたM777がウクライナ軍に大量供与された理由は別のところにあると筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。

 従来、口径155mmクラスの牽引砲は重かったことから専用の装軌式牽引車、もしくは出力の大きな大型トラックがセットで必要とされていました。これらでないと牽引・運用できなかったのですが、M777は前出のとおり軽いので、それらより小さな車両でも牽引できるのです。

【写真】さっさと展開 さっさと撤収! M777の使い方 画像で見る

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