同じ顔なのに4形式 東武鉄道50000系一族のすべて 細かな違いもいろいろ

東武鉄道では、オレンジ色の50000系一族が東上線や東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)などで使用され、東京メトロ副都心線や有楽町線、半蔵門線を経由して東急東横線や田園都市線などでも見ることができます。一見、同じ車両のようですが、実のところ4つの形式に分かれているのです。

この記事の目次

・東武50000系一族とは、どんな電車?
・最初だけ、違う顔
・微妙に違う、長さと幅
・顔は同じでも、窓が違う
・50000系一族、車内の違い
・東上線から東武スカイツリーラインへ転属

【画像枚数】全28枚

東武50000系一族とは、どんな電車?

 東武鉄道の50000系一族は「人と環境にやさしい次世代型車両」という考えを基に、日立製作所の「A-train次世代アルミ車両システム」を取り入れて作られました。

 従来の東武鉄道の通勤車両とは異なる考え方で作られ、アルミ製ダブルスキン構造の車体を取り入れてデザインを一新しています。ドアの開閉には電気式の戸閉装置を導入したほか、集中式の冷房装置を採用、ATI (Autonomous Train lntegration)という車両情報制御装置を導入して、車両に搭載した機器をまとめて管理しています。

Large 220526 tobu 01

拡大画像

直通先の東急田園都市線二子玉川~二子新地間ですれ違う東武鉄道50050型(2022年5月3日、柴田東吾撮影)。

「A-train」では、アルミ製ダブルスキン構造という二重構造の車体とすることで、軽くて丈夫で、作りやすく、保温や遮音にも優れた構造としています。東武鉄道の車両では「A-train」を東武アーバンパークライン(野田線)向けの60000系でも採用したほか、2023年に導入予定の新形特急車両N100系にも採用する予定です。

 日立製作所によると「A-train」の「A」には、「Advanced(高度な)・Ability(才能・能力)・Amenity(快適さ)・Aluminum(アルミニウム)」を統合的に表したものとしています。

 50000系一族では、走行路線や使い道によって、次の4つの形式に作り分けが行われました。

 50000型 東上線用(地上線向け)  2004(平成16)年登場
 50050型 東京メトロ半蔵門線直通用 2005(平成17)年登場
 50070型 東京メトロ副都心線直通用 2007(平成19)年登場
 50090型 東上線「TJライナー」用  2008(平成20)年登場

 最初に登場したのは、東上線用の50000型でした。翌2005年には東京メトロ半蔵門線直通用の50050型が登場し、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)から東京メトロ半蔵門線を経由して東急田園都市線に乗り入れています。50050型では、半蔵門線や田園都市線の乗り入れに対応した機器として、保安装置のATCや専用の列車無線などを搭載しています。50000系一族のうち、最も数が多い車両でもあるのです。

 2008年には東京メトロ副都心線が開業しましたが、これに合わせて2007年に登場したのが50070型です。50070型は東京メトロ副都心線開業時に有楽町線と一体的に運行することから、副都心線と有楽町線の双方に対応して登場しました。

 2013(平成25)年からは東急東横線にも乗り入れを開始して、横浜高速鉄道みなとみらい線にも直通しています。そのため50070型は地下鉄有楽町線(和光市~小竹向原)・副都心線で行われているワンマン運転に対応しているほか、保安装置や列車無線も有楽町線・副都心線、東急東横線などに対応したものを搭載しています。

 東上線では、2008年から座席定員制列車の「TJライナー」の運行がはじまりましたが、「TJライナー」として作られたのが50090型です。50090型はマルチシートを備え、扉間の座席では進行方向に席を向けたクロスシートと、窓を背にしたロングシートの双方に設定することができます。「TJライナー」などではクロスシートにセットされていますが、急行や普通(各駅停車)で使用する際は座席向きを変え、ロングシートに座席がセットされています。こうして、50090型は幅広い用途で使うことができるのです。

 さらに50000型一族では、製造過程で作り方を変えたため、この4形式にとどまらない違いがあるのです。

残り3189文字

この続きは有料会員登録をすると読むことができます。

2週間無料で登録する

Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。

最新記事