伊予鉄「坊っちゃん列車」が走るまで 路面電車の線路に汽車再現どうやった? 転車台もなし
夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場する「マッチ箱のような汽車」。これを再現したのが伊予鉄道の「坊っちゃん列車」です。数あるレトロ風な鉄道車両の中でも、再現度はかなり高めです。
漱石曰く「マッチ箱のような汽車」
「停車場はすぐに知れた。切符も訳なく買った。乗り込んで見るとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。道理で切符が安いと思った。たった三銭である」
明治時代の文豪・夏目漱石の小説『坊っちゃん』の一説です。この汽車を再現したものが、愛媛県松山市内で「坊っちゃん列車」として走っています。
この「マッチ箱のような汽車」とは、1888(明治21)年にドイツ・ミュンヘンのクラウス社で製造・輸入された、伊予鉄道のB形(甲1形)蒸気機関車と、ハ-1形客車のことです。
愛媛県松山市内を走るこの鉄道は、現在の伊予鉄道松山市内線で、日本初の軽便鉄道でした。私鉄といえば当時、事実上日本政府が敷設した「日本鉄道」と、「東京馬車鉄道」「阪堺鉄道」くらいという時代です。漱石から見れば非常に珍しく、かつ新しい乗りものだったため、小説に登場させたのでしょう。
この「坊っちゃん列車」は、1888~1954(昭和29)年の66年間に渡って運行されました。長年、松山市民に親しまれたため、保存車両も各地にあります。なお松山市駅に隣接する「坊っちゃん列車ミュージアム」と新居浜市の愛媛県総合科学博物館には、1号機関車の原寸大モデルもあり、愛媛県有数の観光施設となっています。
松山市にある米山工業に至っては、1977(昭和52)年に蒸気機関車と客車のレプリカを製作し、全国各地でイベント走行を行ったほど。この列車は映画『ダウンタウンヒーローズ』にも出演しています。
しかし、路面電車である松山市内線で、このような「坊っちゃん列車」を復活運行できるかといえば、話が違ってきます。蒸気機関車が市街地で煙を上げれば公害になるからです。
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