電車のブレーキ発電を再利用 世界初の「超電導フライホイール蓄電システム」JR東日本が採用へ

車のおもちゃで「手で勢いを付けると、手を離しても走り続ける」仕組みがありましたよね。あれです。

けっこう無駄になっていた電力を救済

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JR中央本線で使われる211系電車(画像:写真AC)。

 JR東日本は2022年6月7日(火)、鉄道車両のブレーキ時の余剰電力を貯めておくため、沿線蓄電システムに、「超電導フライホイール蓄電システム」を導入する実証実験を行うと発表しました。

 電車のブレーキは、物理的に車輪を抑えてつけて止めるブレーキのほかに、車輪の回転力を発電機に伝えて電力に変える「回生ブレーキ」を一般的に備えています。

 回生ブレーキによって生まれた電力は、架線を通して、近くの別の電車へ回されることが一般的ですが、近くに電車がいない場合は、その電力は無駄になってしまいます。そこで、その電力を貯めておく蓄電装置を沿線に設置するのが、今回の取り組みです。

 さらに今回は、電気の貯め方として、バッテリーに蓄電するのではなく、新技術の「超電導フライホイール蓄電システム」を採用しています。

 フライホイールとは、円盤などを高速で回転させることで、「運動エネルギーが蓄積された状態」にするものです。昔から自動車の玩具にも採用されており、力を入れて玩具を前進させると、内部のフライホイールに回転力として力が貯まり、単なる慣性以上の持続力で走り続けるのです。これを応用したのが今回のシステムです。

 電車から架線を通じて送られてきた電気は、モーターで回転力に変えられ、フライホイールに蓄積されます。電車が逆に加速などで電気を必要とした場合、その回転力で発電機を回して、電気として供給します。

 こうして、本来無駄になってきた回生電力をうまく再利用することで、年間146メガワット時の電力が節約されるそうです。なお今回は、軸受けに超電導技術を活用することで、摩擦によるエネルギー消耗も抑えられ、効率が高まっているといいます。

 この装置は中央本線の穴山駅北側の変電所に設置され、8日から運用開始されます。穴山駅のある小淵沢~甲府間は約22kmのあいだに約600mもの高低差があるため、東京方面へ向かう列車は発電、松本方面へは逆に電力消費が大きく発生します。

 JR東日本によると、この「超電導フライホイール蓄電システム」の鉄道への採用は世界初の事例とのことです。

【了】

【電力再利用の「世界初」のしくみ】

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コメント

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2件のコメント

  1. 「超電導磁気軸受」を用いるという部分が世界初ですね。
    単なるフライホイール蓄電は、京急逗子線で用いられています。
    (もっとも、こちらは省エネ目的というより、末端区間の電圧降下対策が主目的のようですが)

  2. 近くに電車がいないとムダになっていた…
    その場合 発生電力がムダに というよりは
    負荷が無い場合回生失効し空気ブレーキのみでブレーキ力を確保し発電自体しなくなっていた のであって
    発生した回生電力がムダになっていた ような記述は違うのでは?

    負荷不在による回生失効を防ぐためのものが
    方式は色々あれど 電力吸収装置 や 送電網への逆流をさせる 逆変換装置

    負荷不在による回生失効や
    地上設備の故障などで 急に回生失効した場合のブレーキ力変動や不足 を嫌って
    EF63や64などの昔の勾配線区向け機関車は車載の抵抗器で熱に変換する 発電ブーキ を採用したとか