「CO2が資源になる時代」近い? 日韓の造船競争が激化する「液化CO2運搬船」とは

国内外の企業を巻き込んでプロジェクトを進める三菱

 将来的にCCUSが広がった場合、CO2の輸送需要は10億トン以上に及ぶと予想され、バリューチェーンを構築するには、工場などから回収し液化したCO2を、海を隔てた貯留サイトやリサイクル拠点まで大量に輸送するLCO2船が必要となります。これまでも、炭酸飲料をはじめ食品用途などでLCO2船が用いられていますが、これを運ぶ既存の1000~2000立方メートル型LCO2船では、小型のため能力に限界がありました。

 そうしたなか三菱造船は2022年6月8日、LCO2船に搭載する球形カーゴタンクシステムの基本設計承認(AiP)をフランス船級協会ビューロベリタスから取得しました。低温かつ圧力の高い状態で液化されたCO2ガスを積載して輸送するため新たに開発したもので、球形タンク式LNG船の設計・建造で培ってきた技術を応用。容量3万立方メートル以上の大型LCO2船への搭載を想定しており、三菱重工は「コスト面で有利に立つことができる」としています。

 タンクだけでなく船体の開発も行っており、2022年3月には商船三井と共同で研究している5万立方メートル型「アンモニア・LCO2兼用輸送船」のコンセプトスタディーが完了したことを発表。これは往路でアンモニア、復路でLCO2を輸送する想定です。5月には、日本郵船と共同で開発した大型LCO2船のAiPを日本海事協会から取得したほか、前出の通りフランスのトタルエナジーズとも、LCO2船の開発に関するフィージビリティ・スタディー(実効性調査)を始めています。

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三菱造船と商船三井が開発しているアンモニア・LCO2兼用船のイメージ(画像:三菱重工業)。

 実船に関しては、容量1450立方メートル型の実証試験船が三菱重工の下関造船所で建造され、2023年度後半の竣工が予定されています。これは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業として行う舞鶴(京都府)から苫小牧(北海道)までのCO2海上輸送へ投入。その実証事業では、川崎汽船が輸送・荷役時の安全性評価と技術的なガイドラインの策定に取り組みます。

 このほかにも、三菱重工は回収したCO2とグリーン水素を合成してクリーン燃料「エレクトロフューエル」を製造する技術を持つ米インフィニウムに出資しており、CCUSバリューチェーンの構築を着々と進めています。

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