海上自衛隊の新艦種「哨戒艦」いよいよ建造へ そもそも何する艦? 大量整備で造船業にも光

哨戒艦建造で造船所の維持にも光明が…

 1990(平成2)年には計6社あった海自の水上艦建造ヤードも、今やJMUと三菱重工グループの2社のみ。JMUは艦艇の新造を横浜事業所に集約しており、磯子工場では空母化が決まった海自最大の艦艇、いずも型護衛艦(基準排水量1万9500トン)や、いわゆるイージス艦と呼ばれるまや型護衛艦(基準排水量8200トン)などを、鶴見工場では船体材料にFRP(繊維強化プラスチック)複合材料を採用した、あわじ型掃海艦(基準排水量690トン)などの建造を担ってきました。

 一方で日本の造船業自体が、中国・韓国との競争や資機材価格の高騰などで苦境に立たされており、JMUも艦艇ヤードである横浜事業所の操業を維持し続けるには、艤装の密度が高く工数も多い艦艇の手持ち工事を複数隻、確保することが求められていました。

 JMUが哨戒艦の開発・建造を手掛けることで、同社としても横浜事業所の維持に光明を見出すことができるようになったともいえるでしょう。また、これで自動化・省人化がさらに進んだ次世代の自衛隊艦艇の実現にも筋道を立てられるようになるため、将来艦船の設計・建造にもつながっていくのではないでしょうか。

【了】

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Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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2件のコメント

  1. 既存間の艦齢延伸で四苦八苦していたので、まずはフネが増えてよかったです。
    スペックとしては物足りないかも知れませんが、軍の装備品はハイグレード品による少数精鋭だけでは成り立たず、数も必要な不可欠な要素です。
    大分前ですが、海峡監視に訓練支援艦を用いていると聞いたこともありますが、先日の報道でも日本近海を航行した中国艦の監視を「ましゅう」が行っていたこともフネ不足が原因かなと疑っています。
    少ない乗員で運用できることも、隊員不足で一番困っている海自には朗報です。(ダメージ・コントロールが少し心配ではありますが)
    また、フネが増えれば、若い士官でも艦長経験が積める機会が増えますから、海自幹部の能力向上に寄与するでしょう。(現状は、いくらハイスペックな艦でも、正直、一佐の艦長が多すぎる気がします。)
    一尉、三佐クラスで艦長を経験し、自在に艦を操れる幹部が増えることは防衛力の強化につながると期待しています。

  2. 船を増やす自体は賛成処か最早待った無しだろうけど、もっと海保との一元化は出来ないものか。