急坂!激セマ!本数多すぎ!「長崎のバス」 西九州新幹線から乗り換えて日常の絶景へ

車窓の変化を楽しめる!長崎の「団地行き・坂のぼりバス」

 戦災・原子爆弾の投下で壊滅的な被害を受けた長崎市はわずか数年で人口が戦前の水準を超え、昭和30~40年代には山手に張り付くように住宅団地が造成されていきました。路線バスもこの時期に、坂の上にある団地や宅地に向けて、積極的に路線を伸ばしています。

 その中でも、市街地の北東部にある金比羅山を駆け登っていく長崎バス20系統などは、わずかな距離で幾度にもカーブを描き、大型バスが旋回できるギリギリの道幅を進み、急坂を上っていきます。終点・江平高部バス停はバス2、3台が停車できる転回場が併設され、市街地への路線の他にも百合野病院に向かう路線「ゆりちゃん」や幼稚園の送迎バス、そして山の上からバス停まで家族を送迎するクルマなど、その出入りは見ていて飽きないほどに賑やかです。

 他方、この地区は高齢化率が30年で30%近くにのぼっています。世帯数は大きく変わらない中で、2021年に中学校が閉校したのに伴って、終点バス停も「江平中前」から「江平高部」に名称を変更し、狭隘な道路で歩行者のスペースを確保するため一部バス停を標柱タイプから建物に貼る形式に変更するなど、少しづつ変化しながら今日も運行を続けています。

 市の南側の新興住宅街・ダイヤランドに向かうバスは、二本松口経由なら山麓のバイパスを快走、戸町経由は谷底の狭隘な旧道を慎重に走り抜けていきます。眺める車窓も、前者が高台から見下ろす長崎湾や山手の戸建ての住宅街、そして後者は味のある下町と、車窓の楽しみはまったく違うもの。なおこの路線は途中で新地中華街やグラバー園などの近くを通るため、観光路線としても便利です。

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江平高部から市街地へ向け一気に坂を下りるバス。この時点で乗客はかなり多い(宮武和多哉撮影)。

 そのほか、一風変わった地名で知られる「女の都(めのと)団地」や、さだまさしさんの歌でも知られる「唐八景」方面のバス、電波塔の前にあるバス停から山道を降りていく「無線中継所前」始発便でも、長崎の坂の多さや運転手さんのドライビングテクニックを観察することができます。

 山裾のわずかな平地に5階建てのバス車庫が併設されている市北部の「桜の里ターミナル」も見ものです。建物内の螺旋状のスロープをぐるぐると上がっていくバスは、外から見ていても、かなりハンドルを切っている様子がうかがえます。

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