動く電話ボックス? 長崎ならでは「斜面移送システム」なぜできた 坂の街が抱える課題
市街地の4割以上を傾斜地が占める長崎市では、モノレール状の「斜面移送システム」が活躍しています。クルマも自転車も入れない「階段道路」をのぼる、電話ボックスのような乗りもの、どのような使われ方をしているのでしょうか。
まるで「石段をのぼる電話ボックス」
2020年現在で人口40万人を擁する長崎市は、市街地の面積のうち4割以上を傾斜地が占め、「さかんまち」(坂の町)とも呼ばれています。住宅街にはクルマも自転車も入れない「階段市道」も多く、平地の市街地との行き来に必要な労力は相当なものです。
この登り降りを軽減するため、長崎市は2000年代に一部の階段状の道路へ、全国でも例がない「斜面移送システム」を設置しています。2人乗れば車内がいっぱいとなる電話ボックス状の小さな乗りものは、場所ごとに「てんじんくん」(天神町)、「さくら号」(立山)、「水鳥号」(水の浦)と名前が付けられています。「乗車」できるのは地元の人のみで、専用のカードを読み込ませて機械を動かすシステムです。
幅1、2mほど階段市道の横に鉄柱が連続して建てられ、その上に懸垂式(吊り下げ型)のレールが設置されています。レールからぶら下がった車両は、極めてゆっくり、ゆっくりと坂を上っていきます。その速度たるや1mを4秒、時速にして0.9kmほど。健康な人なら歩いた方が早く、通りすがりのネコにも抜かれていくほどです。
2002(平成14)年に設置された「てんじんくん」の場合、始点から終点まで80mを移動するのに5分強かかります。しかし、坂の上の終点で降りて振り返ると、さっきまでいた場所が眼下に霞むほど山の上まで登ったことがわかります。
そもそも長崎はなぜ、「斜面移送システム」が必要になるほど傾斜地に住宅が広がったのでしょうか。そこには、「さかんまち」ならではの「坂との付き合い方」がありました。
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