旧海軍「航空魚雷」秘密のパーツはベニヤ製!? 米軍驚愕の高速雷撃はどう実現したのか

現代では姿を消した兵器のひとつ「航空魚雷」は、WW2期までは文字通り先端技術の結晶です。旧日本海軍においても実用化は相応の困難をともなうものでしたが、その一端を担ったのは、ベニヤ製のごく簡単な構造のパーツでした。

ごく簡単な構造の木製パーツがもたらした技術的ブレークスルー

「框板」は航空魚雷の空中姿勢を安定させる、脱落式の木製尾翼です。300km/h以上の速度で魚雷を投下しても尾部の「框板」により空中姿勢は安定し、しかも着水の衝撃で框板は脱落するため、魚雷の航走に影響しません。構造は簡単ながらよく機能し、雷撃機が旋回中でも、降下中でも、上昇中でも魚雷の投下が可能になりました。

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脱落式木製尾翼「框板」(画像:Binksternet、CC BY-SA 3.0〈https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0〉、via Wikimedia Commons)。

 さらに投下時にロール(縦軸回転)することを抑制するため、魚雷の側面にも機械制御式の小さな安定翼を付け、これが着水時に脱落し抵抗となって沈降深度を抑えることもできました。

 これらの工夫で魚雷の定針精度はずっと向上し、荒れた海上を全速力で航行する艦船などへの雷撃や、水深の浅い海での雷撃も可能になりました。これが「安定器付き九一式航空魚雷改2」です。水深の浅い真珠湾で威力を発揮した日本海軍の切り札であり、生産にこぎ着けたのは1941(昭和16)年8月のことで、12月8日の真珠湾攻撃に間に合うギリギリのタイミングでした。

 この脱落式木製尾翼「框板」は、アメリカ海軍には無かった発想でした。1942(昭和17)年5月8日の珊瑚海海戦で空母「レキシントン」のフレデリック・C・シャーマン艦長は、九七式艦上攻撃機が従来の雷撃機ではできなかった400km/hに近い高速で雷撃してきたことに驚き、撃墜した九七式に搭載された魚雷の尾部がなにか箱型のもので覆われていたのを視認して、これが高速でも安定して雷撃できる機構ではないかということを報告しています。

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空中姿勢安定板(框板)も改良が加えられ、いくつかの形式があった。1944年の艦攻「流星」に装備された九一式航空魚雷。

 九一式航空魚雷は画期的な対艦攻撃手段でしたが、九七式艦上攻撃機が1機7万円の当時、九一式航空魚雷は1本2万円という非常に高価で貴重な兵器でした。重い魚雷を抱えた雷撃機は敵戦闘機に見つかれば逃げ切れず、雷撃時には低空を一直線に飛行するため敵艦の対空砲火には恰好の標的となりました。雷撃機は対艦攻撃の花形であったものの、その運用および戦果は高い犠牲と引き換えのものであり、戦争末期の日本海軍雷撃隊の損耗率は壊滅的でした。

 長い苦労と多くの工夫が凝縮され、余多の戦果と犠牲を出した日本海軍の航空魚雷ですが、戦後は対艦ミサイルにすっかり取って代わられました。

【了】

【画像】こんなの抱えて飛ぶのか…九一式魚雷の大きさがよく分かる「赤城」艦上の1枚 ほか

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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