「世界一危険な空港」に行ってきた 激短滑走路の先には崖! 驚きの離着陸事情

ヘリコプターのハブ拠点として超重要

 テンジン・ヒラリー空港は、人員や物資の輸送を担う固定翼機用の空港としてだけでなく、近隣の村をつなげるヘリコプターの拠点空港としても位置付けられています。そのためターミナルから5分ほど歩いたところにヘリコプターターミナルが設けられており、こことナムチェバザールやエベレストベースキャンプを含む近隣の村をヘリコプターが行き来しています。

 以前は、舗装されていない駐機場からホバリングをして滑走路にでて離陸する方式でしたが、2019年にヘリコプターの駐機場へ固定翼機が突っ込み、死亡事故が発生したことから、その後ヘリコプターターミナルが建設されました。

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1日のフライトが終了したテンジン・ヒラリー空港のヘリポート(斎藤大乗撮影)。

 ヘリコプターターミナルの外観は最近できたということもあって大変綺麗で、ヘリコプターの駐機兼離発着場所であるエプロンはしっかりと舗装されています。離着陸はエプロンから直接行いますが、見ていると滑走路に出て、そこで滑走離陸をする機体もあるようです。

 ヘリコプターは固定翼機と比べ搭乗できる人数が少ないため、利用料金が比較的高く、テンジン・ヒラリー空港から最寄りの大きな街であるナムチェという街へ行くのに15万円ほどかかります。しかし、世界最高峰のエベレストを一眼見ようと世界中から人が集まるため、なかにはヘリコプターをタクシー感覚で使うお金持ちもいるようで、ひっきりなしに発着していました。

 ここは1964(昭和39)年にエドモンド・ヒラリーによって造られた、猫のひたい程の小さな空港ですが、2019年の利用者は12万9508人と観光客や住民にとって必要不可欠な空港になりました。しかし、これからも需要は増える見込みで、それに応えるにはルクラの街全体の課題である慢性的な電力不足を解決し、離着陸に大きく関係する天候の影響を軽減するための航法・誘導装置の拡充が必須でしょう。

 2022年9月現在、日本のODA(政府開発援助)によってテンジン・ヒラリー空港も含むネパール各地の主要空港の安全化対策を行っています。これにより近い将来、世界一危険な空港という汚名が返上されることを筆者は願ってやみません。

【了】

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Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)

木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。

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