あり得ない山道!からの、広がる安堵の海 “エモい”終点だらけな長崎のバス

長崎から北の“鉄道がないほう”には何がある?

 長崎では海沿いの長距離路線も多く、乗り継ぎルートもまだまだ健在。中でも市街地から北上して、鉄道が通っていない大村湾の西側にあたる西彼杵(そのぎ)半島に向かうバスなら、長崎の海のさまざまな表情を観察しながら、乗り継ぐことができます。

 例えば半島の西側を北上するなら桜の里ターミナルで乗り継ぎ、西海市役所・樫の浦方面へ。バスから荒波が打ち寄せる東シナ海、沖合に出る漁船が何隻も連なる姿を存分に眺めることができます。半島東側を移動するなら、時津北部ターミナルから大串方面へのバスに乗り、牡蠣や真珠の養殖設備が並び「琴の海」とも称される穏やかな大村湾を眺めるのも良いでしょう。

 大村湾はその北側で、「針尾瀬戸(伊ノ浦瀬戸))「早岐瀬戸」という二つの狭い海峡で仕切られ、湾内に栄養が溜まりやすく、かつ荒れないとあって養殖漁業に向いた環境と言われています。「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「第九の波濤」でも、大村湾は「鯨の養殖」構想の候補地として登場。その他同作品では長崎市内や前述の茂木港、佐世保市の「展海峰」などが登場し、長崎大学水産学部の研究施設への移動手段として路線バスも描かれています。

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西彼杵半島の付け根にある相川・式見へ向かうバスも高台から海を眺めることができる(宮武和多哉撮影)。

激セマ海峡から佐世保へ、ずっと海沿い大回り可能!?

 西彼杵半島の西まわり、東まわりのバスは車庫のある大串で合流。ここからバスを乗り継ぎ北へ、西海橋を渡って佐世保市に向かうことができます。潮の流れが速い針尾瀬戸(伊ノ浦瀬戸)を渡る橋は、海面からの高さが43mもあり、バスから降りて展望台まで行けば渦潮を眺めることもできます。

 なお西海橋を渡った先は佐世保市南部の「針尾島」で、前出した早岐瀬戸により隔てられた“離島”です。とはいえ早岐瀬戸は短いところで幅10mほどしかなく、橋も数本かかっているため、離島感は全くなく、朝晩には佐世保方面へのラッシュも見られます。

 佐世保駅から北も、路線バスで北松浦半島をぐるりと回り込んで、玄界灘沿いの松浦市、さらに佐賀県伊万里市、唐津市まで、玄界灘を眺めながら海岸線を乗り継ぐこともできます。さまざまな海を座席から心ゆくまで眺められる路線バス乗り継ぎコースですが、一部区間の本数の少なさもあり、全てを路線バスで移動すると丸一日かかるのでご注意ください。

【了】

【写真】海のすぐ後ろに屏風のような山 長崎の“エモい”バス終点

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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