ツルツルボディこそ最新鋭の証!もがみ型護衛艦 乗ってわかったイージス艦との違い【観艦式目前】
落水者が出たら、浮き輪どこから出すの?
実際にFFMに乗ってみて他の艦艇との違いを一番感じたのは艦首側の甲板です。「あたご」や「あさひ」の写真と比べてみると一目瞭然ですが、浮き輪や各種スイッチ、ホース、揚錨機、係留索といったものが一切、置かれていません。
これはステルス性をより高めるためで、係船作業で使用する機器は全て1層下の錨甲板に置かれ、艦内から離接岸作業を行えるようになっています。洋上補給装置のひとつ「スライディング・パッドアイ」も艦内に収められるよう昇降式のものを採用するほどの徹底ぶり。ヘリコプター甲板を囲む起倒式の手摺りも金属製の板になっています。
艦橋を見上げると、それぞれの艦でデザインが異なることがよくわかります。イージス艦の「あたご」は多機能レーダーとしてSPY-1Dを艦橋の下側に装備。一方で2018年3月に就役した汎用護衛艦の「あさひ」は、多機能レーダーのOPY-1を艦橋上面に設置しており、それが外観上の特徴となっています。
「もがみ」型では塔型のマストに多機能レーダーOPY-2を置き、その上に電子支援装置、通信装置、電波航法装置を一体化した円筒型の複合通信空中線NORA-50(United Complex Radio Antenna、通称ユニコーン)を搭載しました。従来の自衛艦ではお馴染みだった速力信号標が付けられていないため、とてもすっきりした印象を受けます。こうした独特な艦上構造物とステルス性を考慮した船体が組み合わさることで、近未来的な印象を受けるシルエットになっているといえるでしょう。
短魚雷発射管は「もがみ」型も搭載していますが、ステルス性を配慮してとうぜん艦内に格納されています。これは「あさひ」も同様で、同艦では短魚雷発射管のほかMOD(自走式デコイランチャー)も艦内に置かれており、開閉式のハッチによって船体の凹凸を最小限に抑えるようになっています。「あたご」では短魚雷発射管は開口部に置かれているため、こうした面からも護衛艦の進化の歩みを見て取れるでしょう。
従来の護衛艦とは明らかに異なるシルエットを持つ「もがみ」と「くまの」。11月5日には大さん橋で「くまの」が、11月12日と13日には都心の東京国際クルーズターミナルで両艦が公開されるので、見に行ってみてはいかがでしょうか。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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