国際観艦式とは空気一変! “多国間洋上救難訓練”を実見 11か国の艦艇の中心に「ぶんご」

陸地の病院ではなく海上の医療拠点で応急処置

 訓練ではまず、被災船舶を演じる4隻が、バラバラの場所に移動していきます。それぞれ15平方マイルの海域が指定されており、その中から被災した船を捜索することから始まりました。それに対して、海上自衛隊のP-1哨戒機が空から捜索、被災船舶を発見すると随時、護衛艦や外国艦艇が連携して接近していきます。

 そして、被災船舶から遭難者を救助すると、艦艇とヘリコプターでリレーする形で海上医療拠点に指定された「ぶんご」まで輸送。艦内では遭難者の負傷状況を確認するとともに選別(トリアージ)が実施され、負傷具合に応じて艦内での医療行為とそこから航空機を使っての陸上への後送を行っていました。

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負傷者(この時点ではダミー人形)を掃海母艦「ぶんご」まで運んできたSH-60K「シーホーク」哨戒ヘリコプター(布留川 司撮影)。

 訓練初期の負傷者はダミー人形が使われていましたが、ヘリコプターが「ぶんご」に着艦すると、ここで負傷者役は海上自衛隊員へと代わります。4名はそれぞれ異なる負傷状態にあり、顔や手足に血糊でメイクまでされ、軽傷から重傷まで迫真の演技を見せていました。

 負傷者はまず、船体中央にある貨物用エレベーターで艦内へと下ろされ、倉庫エリアでトリアージが実施されます。軽傷者は士官室を転用した仮設の医療室で処置が施されましたが、重傷者については手術室のような処置準備室や、潜水病の治療のための減圧室なども活用され、応急処置が施されました。

 減圧室とは本来、機雷や海中の不発弾を処置する水中処分員が潜水病になったときに使われる部屋ですが、今回は民間人の治療室として、訓練では中に負傷者を入れて実際に動作まで行われていました。

「ぶんご」は本来、掃海母艦として、掃海任務時(逆の機雷敷設任務も可能)に他艦艇や航空機の指揮を執るほか、燃料や物資、真水などを補給したり、任務中に負傷した掃海艇の乗員や潜水員の治療などを行ったりするのが主な任務です。そのため、艦内には物資集積用の倉庫があるほか、医療設備も充実しており、それが今回の共同訓練で海上医療拠点に指定された理由と考えられます。

【減圧室が“処置室”に】掃海母艦「ぶんご」での救護訓練ほか

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