ハリアー奮戦で「スキージャンプ+VTOL機」英国式が世界標準に! 40年前の“戦訓”
スキージャンプを備えるメリットとは?
「ハリアー」は、イギリスが総力を結集して誕生させた革新的な航空機で、長大な滑走路を必要としないのが特徴です。ヘリコプターが離着陸できる場所であれば同じように運用可能なため、自軍だけでなく着上陸作戦時にダイレクトで航空支援が必要なアメリカ海兵隊も注目し、導入していました。
この「ハリアー」の派生型といえるのが、海軍向けの「シーハリアー」です。軽空母は搭載機数が少ないので、艦隊空母のような大規模航空作戦は実施できないものの、「シーハリアー」が誕生したおかげで、艦隊防空を担うことが可能になりました。これにより、ヘリコプターによる対潜哨戒と合わせて、イギリス海軍のニーズを満たせるようになったのです。
こうして、イギリス海軍は軽空母「インヴィンシブル」を生み出しますが、設計に際して、きわめて優れたアイデアを盛り込みました。それが飛行甲板への「スキージャンプ台」の設置でした。
STOVL(短距離離陸/垂直着陸)機である「シーハリアー」は、エンジンの推力だけで垂直に離陸する際には、持ち上げられる重量の都合で燃料や兵装の搭載量が制限されてしまいます。しかし滑走しながら先端へ進むにしたがって上反角が強くなるスキージャンプ式発艦甲板を使うと、エンジン推力だけでなく翼による揚力も得られるので、搭載可能な重量がより大きくなるのです。
かくして、世界で初めてスキージャンプ式発艦甲板を備え、STOVL機のシーハリアーを艦上機の主力とする、軽空母「インヴィンシブル」は完成・就役します。しかし従来型の艦隊空母とCTOL機の組み合わせが絶対だと考える人たちにとっては、「インヴィンシブル」など中途半端な戦闘艦でしかありませんでした。
「インヴィンシブル」は1977(昭和52)年5月3日に進水し、1980(昭和55)年7月11日に就役しますが、前出したように戦力として通用するかは不透明な状況でした。そのため、一時はオーストラリアへの売却すら検討されたほどです。
しかし、そのような見方は就役から2年後の1982(昭和57)年に起きたフォークランド紛争で一変します。
なるほど。スキージャンプを採用すると、オートバックスのタイヤが出てきて、艦隊少女になるわけですね。