ハリアー奮戦で「スキージャンプ+VTOL機」英国式が世界標準に! 40年前の“戦訓”
下馬評を見事覆し、軽空母のスタンダードへ昇華
フォークランド諸島がアルゼンチン軍の攻撃を受けて占領されると、「インヴィンシブル」は、同じくスキージャンプ式発艦甲板に改修されてシーハリアー運用空母となった「ハーミーズ」と共に機動部隊を編成して出撃。本国から1万2000km以上も離れた洋上で艦隊防空と対地攻撃に大きな威力を発揮し、「シーハリアー」と軽空母の組み合わせが、きわめて有効であることを実証してみせたのです。
このフォークランドでの戦訓は、世界各国に大きなインパクトを与えました。それまで空母を保有できなかった国々で、ヘリコプター運用能力を備える強襲揚陸艦に「ハリアー」の運用能力を後付けしたり、軽空母と「ハリアー」をセットで導入したりという波及効果を生んだのです。
当のイギリスも、フォークランド紛争後には姉妹艦「イラストリアス」と「アーク・ロイヤル」を就役させ、インヴィンシブル級空母として長らく運用。2017(平成29)年にはより大型で高性能な空母「クイーン・エリザベス」を就役させましたが、同艦にもスキージャンプ式発艦甲板は受け継がれています。
イギリス本国以外を見回してみても、スペインやイタリア、タイなどが「スキージャンプ式発艦甲板」付き軽空母と「ハリアー」をセットで導入・運用しており、その流れは「ハリアー」の後継としてF-35B「ライトニングII」が登場したあとも続いています。
イギリスは世界初の空母「フューリアス」を生み出したうえ、カタパルトやアングルド・デッキ(着艦用斜め甲板)など、空母にかかわるさまざまな技術を発明した実績を持つ国です。それに加えてSTOVL機+スキージャンプ式発着甲板という運用手段を編み出したことは、まさに「空母発祥の国」としての面目躍如といえるでしょう。
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Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
なるほど。スキージャンプを採用すると、オートバックスのタイヤが出てきて、艦隊少女になるわけですね。