国旗と全然違う!「軍艦旗」なぜバラバラなのか なんだか強そうなガラガラヘビ柄も
軍艦旗に「白象」を描く国も
インドは長らく英国海軍に似通ったホワイト・エンサインにセント・ジョージ・クロスをあしらった軍艦旗を使用していました。一方で植民地時代のシンボルではなく独自のデザインの旗を導入することが求められていたため、何回かの変更を経て2022年9月に国産空母「ヴィクラント」の就役に合わせ、新しいデザインの軍艦旗を採用しました。
現在のインド海軍の軍艦旗は、カントンにはこれまでと同様、インド国旗を配置。フライ側には盾と錨、そして国章であるアショーカの獅子柱頭で構成された海軍のエンブレムを、八角形の金色の枠に囲まれたネイビーブルーの下地と組み合わせたシンボルを描いています。
ちなみに、かつてイギリスの植民地であったマレーシアやシンガポール、イギリスの保護領であったブルネイも「ホワイト・エンサイン」を基調とした軍艦旗を使用しています。フライ側に描かれているのは、マレーシア海軍が2本の交差したクリス(伝統的な短剣)と錨が合わさったもの。シンガポール海軍が8方位の羅針図を意匠化したものです。ブルネイ海軍は近年、軍艦旗のデザインを変え、国旗と海軍のエンブレムが描かれるようになりました。
タイは国籍旗と軍艦旗の両方が国旗をベースとしつつも異なるデザインとなっています。国籍旗の中央にはタイ海軍のエンブレムを配置。軍艦旗の中央には仏教国である同国で神聖視されている白象が赤い円の中に描かれています。
こうして見てみると、艦艇に掲げられている旗には、その国の海軍が持つ文化と歴史が大きく影響していることがわかります。アメリカ海軍の国籍旗も「ファースト・ネイビー・ジャック」に変更された時期がありますし、日本も海上自衛隊の前身である警備隊時代は全く違うデザインの旗を使っていました。インドのように軍艦旗のデザインを大きく変える国もあります。
外国艦が日本にやって来た時は、軍艦旗にも注目してみると面白いでしょう。ひょっとしたら、たまたま撮影した写真が、その時代を象徴する記録になるかもしれません。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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