実現間近!「水素エンジン船」 脱炭素対応の“本丸” 日本と世界の現状
世界でも水素船登場 ほぼ同時期
イタリア造船大手のフィンカンティエリは2022年11月に、水素燃料電池モジュールを試験的に搭載したクルーズ船「ヴァイキング・ネプチューン(Viking NEPTUNE)」(4万7800総トン)を、スイス船社のヴァイキングに引き渡しています。両社は船舶からのGHG排出削減に向けて水素を燃料に使用する発電システムや低速時の推進システムを開発しており、建造中の新造船や既存船への実装も視野に入れています。
また、オランダのダーメン・シップヤーズ・グループが、ベルギー海運大手のCMBグループと共同で水素焚きエンジンを積んだ工事船(コンストラクション・サービス・オペレーション・ベッセル、CSOV)を開発しています。ウインドキャットグループが2隻を確定で発注しており、ベトナムのハロン造船所が建造し、2025年以降に就航する予定となっています。
2022年9月には、イタリア船級協会(RINA)が同国の新興企業アウレリア・グリーンシップ・コンセプトデザインが開発した水素燃料RORO船(貨物船の一種)にAiPを付与しています。こちらは重量物船やクルーズ船、高級貨客フェリーにも使用可能な水素推進システムも開発する予定です。
水素を広く普及させるためには、水素を大量に製造してコストを下げつつ、それに見合う消費を支えるだけの供給手段を確保する必要があります。現時点では、安価なサプライチェーンは確立されていないものの、脱炭素化の流れの中で水素燃料船の開発が着々と進行しており、そうした船に乗れる機会もそう遠くはなさそうです。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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