「ハノイ・タクシー」って? かつての横田常連C-141輸送機のマルチすぎる功績 宇宙の大発見まで

民間機市場で営業するも売れず……。

 なお、民間機としては1965(昭和40)年に「ロッキードL-300」としてFAAの型式証明を取得。同社は民間航空会社に向けた販売活動を行いましたが、受注を獲得することはできませんでした。そのため、航空会社向けのデモ機として用いられた機体はNASA(アメリカ航空宇宙局)に引き取られ、「カイパー空中天文台」に改造されています。

 同機は、地上から観測すると、大気による光の拡散の影響を受けてクリアに宇宙を観測することができないことから用意された“空飛ぶ天体望遠鏡”といえるもので、胴体をストレッチする前、すなわちC-141Aの形態を残した機体に口径36インチ(91.4cm)の反射望遠鏡を搭載しています。

 これにより、高度4万1000フィート(約1万2500m)から4万5000フィート(約1万3700m)を飛行しながら天体観測を行うことが可能です。

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1986年5月、モフェットフィールド海軍航空基地(当時)で展示されたNASAの「カイパー空中天文台」(細谷泰正撮影)。

「カイパー空中天文台」は、1974(昭和49)年からカリフォルニア州の旧モフェットフィールド海軍航空基地に隣接して設けられていたNASAエイムズ研究所を拠点に観測飛行を開始します。その後、天王星の輪を発見するなどの成果を残し1995(平成7)年にその任務を終えました。

 ちなみに、同機の後継が、2022年秋に退役したSOFIA(成層圏赤外線天文台)になります。こちらはボーイング747SPを改造した機体で2007(平成19)年より飛行していました。

 C-141「スターリフター」は、後に軍用輸送機の定石にもなったデザイン、すなわち胴体の上に下反角のついた後退翼を配置してT型の尾翼を備えた形態を確立した機体といえるでしょう。この形態は東西両陣営のその後の輸送機に大きな影響を与えました。

 C-141の最後の飛行からすでに16年が経過しましたが、現在、世界各国で開発・生産されている多くの輸送機にはC-141のDNAが受け継がれているように思えます。

【了】

【コックピットの様子も】真横から見ると首長っ! C-141の飛行シーンほか

Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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