乗客にとっては快適性直結の“隠れ指標” 旅客機の「客室与圧」改善すると何がイイのか?

近年ではもっと高い与圧能力を持つ機も そしてありがたい副産物

 2022年現在、国内航空会社が多く用いているボーイング787旅客機ではデビュー当時、それまでの旅客機に比べて与圧を高く設定したことが、その先進性を示すエピソードのひとつとして取り上げられました。787の開発に最初から参加しANA(全日空)によると、787の客室は高度約1800mと同じレベルに与圧されているということです。

 与圧を高めているのはビジネスジェット機も同じです。ガルフストリームは2021年、G700の客室の気圧を高め、高度約1万2500mを飛ぶ際、それまでの高度約1000m相当だった気圧を高度約890m相当に改善しました。ボンバルディアが2021年に開発を発表した「チャレンジャー3500」では、先代機とくらべて3割ほど、客室の与圧を改善しているとしています。

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ANAのボーイング787(乗りものニュース編集部撮影)。

 与圧の改善は、もうひとつ、乗客にとっては良い環境変化をもたらします。787は胴体に、従来の旅客機で一般的だったアルミニウム合金ではなく、軽くて丈夫な複合材(強化炭素繊維プラスチック。いわゆる「カーボン」とも)を採用したために与圧を高めることが出来ました。この素材は金属ではないため腐食の心配がありません。そこで787では、客室の湿度を、これまでの旅客機とくらべ、大きく向上させることに成功しています。

 乾燥が苦手な人の中には、喉を痛めるのを防ごうとコロナ禍前から旅客機に乗る際はマスクを着ける人も見かけました。地上の湿度ほどではありませんが、787で乗客の快適さが増したのは確かです。

 客室の与圧も湿度も、一般的な性能表に出てきませんが、乗客が体で感じる重要な指標です。地味であるかもしれませんが、こういった面でも、各メーカーはより快適なフライトの実現へ努力を続けています。

【了】

【比較】歴然!客室与圧、最新機と従来機を菓子パンと揚げ餅の袋で検証してみた

Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)

さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。

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