自賠責返済やっぱり「100年計画」だ! 来年度返済額60億円に決定 有識者「100億必要」不足は税金!?
自賠責値上げ分はすでに“財源の柱” まだ足りず
鈴木・斉藤両大臣合意は2028年度まで有効です。いま、防衛力強化に加えて、子育て支援の財源を模索しなければならない財政事情を考えると、今回を上回る返済を実行するためにはかなりの努力が必要です。100年返済は、ますます真実味を帯びます。
一方、2023年度から自賠責保険料の値上げにより自動車ユーザーが負担する新たな賦課金による収入は、約100億円が見込まれています。個々の負担は1台150円を基本に車種ごとの減額が設定される予定で、来年1月の金融庁が担当する自動車損害賠償責任保険審議会で決定しますが、いずれにせよ財務省の返済額を大きく上回っています。
本来の自賠責の使途である、重い後遺障害を負う交通事故被害者支援などに使われる被害者支援事業は、年間約200億円です。自動車ユーザーの新たな負担100億円、財務省の返済60億円では、なお不足分が出ます。
新たな賦課金制度は、2023年4月1日から始まることになっているので、2023年事業の財源の柱になることが、あらかじめ見込まれていたわけです。
影響は自動車ユーザーだけにとどまりません。財務省が抱える借入金5880億円の内訳をみると、元本4848億円、利子相当額1032億円。この利子相当額は、税金で充当されます。被害者支援事業は、事故を起こす可能性がある自動車ユーザーの負担で行い、税金を使わないことが基本です。財務省が返済を遅らせるほど、利子相当額を税金で支払っていかなければならないことになるのは知られていません。
自動車ユーザー団体などは、このような状況を改善するため、せめて返済計画を明確にすべきだと主張しています。また、積立金の取り崩しを不要とするためには、現状で少なくとも100億円規模の返済が必要だと指摘する有識者もいます。
自賠責保険料の運用益を財源とする「自動車事故対策勘定」の来年度総額は224億400万円(当初予算)。前年度比で52億68900万円増えました。数年後には、さらに被害者や家族の療護施設の新設のための予算が必要と見込まれています。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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