誤射かもしれないミサイルは迎撃OK? 「他国の資産」を撃ち落としても問題ないワケ

北朝鮮が日本を意図的に攻撃してきた場合はどうなる?

 最初に考えるケースは、北朝鮮が日本に対して意図的に攻撃を仕掛けてきた場合です。たとえば、北朝鮮が韓国に侵攻し、あわせて日本の自衛隊やアメリカ軍の基地などに対して弾道ミサイルを発射してくるようなケースがこれに当てはまります。

 この場合、北朝鮮は日本に対して意図的、つまり組織的、計画的に攻撃を仕掛けてきたことになり、これは日本に対する「武力攻撃」にあたります。そして、この武力攻撃の被害国は、これに反撃する権利である自衛権の行使として、国際法上、合法的に武力を行使することができます。つまり上記のケースにおいて、日本が北朝鮮から発射された弾道ミサイルを撃ち落とす行為は、国際法上はこの自衛権の行使に該当するわけです。

 一方、日本の国内法上は、自衛隊の行動や権限などについて定める自衛隊法に基づいて説明されます。まず、北朝鮮の攻撃に対して自衛隊が出動します。これを「防衛出動」(自衛隊法第76条)といいます。そして、防衛出動を命じられた自衛隊の部隊が武力を行使する(=自衛権の行使)ことを規定する自衛隊法第88条に基づき、海上自衛隊のイージス艦や航空自衛隊の地対空ミサイル「PAC-3」などが弾道ミサイルを迎撃するわけです。

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イージスシステムを搭載する海上自衛隊の護衛艦「まや」(画像:海上自衛隊)。

北朝鮮のミサイルが突然発射された場合や事故で落下してきた場合はどうなる?

 それでは、もうひとつのケースとして、北朝鮮から発射されたミサイルが日本に向かってきたとしても、それが意図的かどうか判断できないような場合はどうなるのでしょうか。たとえば、北朝鮮から突然ミサイルが発射されたり、あるいは北朝鮮が弾道ミサイルの発射試験を実施した際に何らかの異常が発生し、日本にミサイルやその部品が落下してきたりするような場合がこれに当てはまります。

 北朝鮮から弾道ミサイルが発射された場合、日本に飛来するまでの時間は十数分程度と見られています。その間に、このミサイル発射は日本に対する意図的な攻撃なのかどうかを判断することは不可能です。また、そもそも発射試験時の不具合でミサイルが落下してきた場合には、攻撃の意図が存在するとは到底、考えられません。そうなると、これらの場合には、北朝鮮による日本に対する武力攻撃が発生したとは認定できず、自衛権の行使もできないことになります。

【画像】ミサイル防衛 陸自の切り札! 改良中の「中SAM改」

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