赤レンガの東京駅はなぜ“高層ビル”にされなかったか 保存復元の裏のカラクリ「空を売る」

赤レンガの東京駅丸の内駅舎は、高層ビルに建て替えるか、保存するかの論争が昭和の時代から続いてきました。保存が実現した背景には、JR、東京都、開発業者など全てが得をする“魔術”ともいえる手法がありました。

“魔術”は東京駅以外でも使われている

 石原・大塚会談の駅舎保存合意を前もって織り込んでいるような仕掛けも、まだあります。並行してレンガ駅舎の保存・復原を前提にした国の重要文化財指定の動きです。大正時代を代表する歴史的建造物で、レンガを主体とした建造物の最大規模の建築として「意匠的に優秀なもの、歴史的価値の高い」貴重な建築とした文化審議会の答申を受け、2003(平成15)年5月に重要文化財指定がなされました。

 これは、首都東京のランドマーク的存在となる意味合いを込めての指定でもあり、文化財としての価値を損なわずに保存・復原工事が実施されることを前提としています。新時代の文化財のあり方を問う、歴史的転換を示すとも言えそうです。

 さらに東京都は、特例容積率適用区域制度内の重要文化財について、容積率を500%アップするというプレミアムまで用意して、東京駅を厚遇しました。

 東京駅レンガ駅舎の保存・復原には、さまざまな思惑が入りまじり、実現にまでこぎ着けました。そしてこの仕掛けは、「日本橋周辺の再開発」と「明治神宮外苑再開発」といった現在に至る一連の流れの源にもなっています。

【了】

【八重洲側より高いんじゃ…】東京駅“高層ビル化”イメージ(画像)

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コメント

1件のコメント

  1. 生前の松田昌士氏から空中をちぎっては投げ

    資金を獲得し予算を一銭も使わず、東京駅の復元を実現したと、何度も伺いました。改めて、松田会長の偉業に感銘を覚えています。

    NN