戦車じゃないよ「戦車駆逐車」ウクライナへ供与する仏製AMX-10RC 戦車より使える?
戦車と同じ構造だから高度な教育訓練も必要なし
こうしたコンセプトのもとに誕生したAMX-10RCは、1971年に最初の試作車が完成し、1978年から量産がスタート。これまでに輸出された分も含めて約460両が製造されています。ただ、開発開始の時点から半世紀あまりが経過しており、部隊運用もすでに約40年が経っているため、性能的にも陳腐化していることは事実です。
途中で性能向上を目的にした改修なども行われたとはいえ、古い車両です。ゆえに、当のフランスも、後継として「ジャグア」偵察戦闘車の導入を2022年から開始しており、2030年までにAMX-10RCは全車退役する計画でした。
そういったなか、2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、今回ウクライナへ複数台が供与されることになったのです。つまり端的にいえば、数年後には退役する車両をウクライナに供与するという、旧式装備の引き渡しともとれる話といえるでしょう。
ただ、ウクライナにおける戦闘の様相を考慮すると、逆に本車が適しているとも筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。なぜなら、ひとつの理由として、本車がNATO標準弾薬を発射可能な105mmライフル砲を搭載しているからです。
2023年現在の目で見ると、105mmライフル砲は、より強力なNATO標準の120mm滑腔砲と比べて確かに見劣りします。しかし、それでも現用のロシア戦車の撃破は可能です。この点では、35mm機関砲や40mm機関砲より有用です。
また、砲は戦車兵が扱う限りにおいて対戦車ミサイルほど教育訓練に時間を割く必要がなく、戦車と同じように射撃することが可能です。そのうえ、ロシア戦車も含む昨今のMBTは、単純に装甲を分厚くする徹甲弾への対策よりも、対戦車ミサイルの弾頭である成形炸薬への対策に力を入れる傾向があるため、「シンプルな徹甲弾(運動エネルギー弾)」が逆に効果的だといえるでしょう。
「戦車並みの大口径砲を備えた装輪装甲車」
というキーワードを見てしまうと、第二次世界大戦時のSd.Kfz.234/2を思い浮かべてしまう。
当時も植民地(即ち熱帯:要するにアフリカ)用重装甲偵察車として開発されていたようですので、まあ、植民地に対するヨーロッパ諸国の思考がよく見えてますね。