戦車じゃないよ「戦車駆逐車」ウクライナへ供与する仏製AMX-10RC 戦車より使える?

フランスがウクライナへ供与を明言した「軽戦車」。一部報道では装輪式のAMX-10RC戦車駆逐車だといわれています。戦車よりも防御力や悪路走破性などで劣りますが、それでも使い道はあるのでしょうか。

世界のトレンド「装輪戦闘車両」の運用に影響も

 なお、ウクライナでは晩秋と春先に、降雨や雪解けの影響で「ラスプーチツァ」と呼ばれる「泥の海」が出現します。これは戦車など履帯(いわゆるキャタピラ)で走る装軌式車両でも踏破に苦労するほどのものであるため、装輪式のAMX-10RCでは、一層走行に苦労するのではと推察できます。

 確かにこればかりは装輪式の弱点であり、だからこそ装軌式が誕生したともいえるのですが、この点はおそらく、AMX-10RC持ち前の良好な不整地踏破能力と、「ラスプーチツァ」の土地で長年培われてきたウクライナ軍なりの泥濘走破のノウハウなどで、いくぶんかはフォローできるのではないかと考えられます。

Large 20230118 01
105mm砲の射撃を行うフランス陸軍のAMX-10RC(画像:フランス軍事省)。

 現在、ウクライナ軍は防戦だけでなく、一部地域ではロシア軍に対して攻勢に出ています。つまり、これまで述べたように威力偵察の機会や、いわゆる「火消し」と称される機動防御の機会が、防戦一辺倒だった昨年よりも増えていると考えられます。加えて、ロシアのMBTは運用上の失敗や構造上の問題などもあって案外、「打たれ弱い」ことも判明しています。

 そのようななか、戦場においてフットワークが軽く(機動力が高く)、威力のあるパンチ(高い攻撃力)をくり出せる本車は、MBTより防御力に劣るとはいえ、さまざまな局面で有用だと筆者は考えます。

 今後、ウクライナ軍に配備されたAMX-10RCがどのように活用されるのか、その戦い方次第では大口径砲装備の装輪戦闘車両の有用性を切り拓くという観点から、世界の軍関係者の注目を集めることもあるのではないでしょうか。そして場合によっては、日本の16式機動戦闘車の戦術にも影響を与えるかもしれません。

【了】

【砲弾積載から夜間射撃まで】ウクライナへ供与予定AMX-10RCの様々な姿をイッキ見

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

最新記事

コメント

1件のコメント

  1. 「戦車並みの大口径砲を備えた装輪装甲車」

    というキーワードを見てしまうと、第二次世界大戦時のSd.Kfz.234/2を思い浮かべてしまう。

    当時も植民地(即ち熱帯:要するにアフリカ)用重装甲偵察車として開発されていたようですので、まあ、植民地に対するヨーロッパ諸国の思考がよく見えてますね。

記事ランキング

  1. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  2. 「断固たる措置を講じる」首都高公式ブチギレ! 「公平性を著しく損なう」非常識ドライバーに“鉄槌”…一体何が?
  3. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  4. 神奈川県警の“バイクは自転車レーン走るな”投稿にツッコミ殺到! 「自転車にも車にもバイクにも迷惑です」…何が問題に?
  5. 史上最大の軍艦より135mもデカい!? 旧海軍「大和」を凌ぐ『エースコンバット8』の新ボス「陸上戦艦」の衝撃スペックとは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号