「スパイ気球」が領空侵犯 日本はアメリカのように撃墜できるのか 現状を鑑みると…?

アメリカ中を騒がせた中国の「スパイ気球」は、F-22「ラプター」による撃墜という幕切れを迎えました。同様の事態を日本も迎える可能性はあるわけですが、果たしてアメリカのように、撃墜という対応はとれるのでしょうか。

現行法では撃墜は困難?

 そして、おそらく最も大きな問題となるのは、今回アメリカが実施した「撃墜」という手段を日本もとることができるのかどうかという点です。現在の自衛隊法および自衛隊内の規則によると、領空侵犯機に対して武器を使用できるケースは非常に限定されています。

 これまでの国会答弁に基づくと、自衛隊機に対して領空侵犯機が実力をもって抵抗してくる場合(正当防衛)、および地上にいる人々の生命などに重大な危険が及びうる場合(緊急避難)には、武器の使用が認められているとされています。

 ただし、これらは自衛隊法で明記されているわけではありません。前述した第84条にある「(領空侵犯機を)着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置をとることができる」という規定にいう「必要な措置」の一環として武器の使用が認められており、その内容を防衛大臣が定める自衛隊内部の規則によって規定されているのです。

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撃墜された気球はアメリカ海軍により回収された(画像:アメリカ海軍)。

 さて、領空侵犯機に対して武器を使用できるとして、では今回のような気球に対しても同様な措置をとることができるのかというと、現状では難しいと言わざるを得ません。

 というのも、今回の気球は非武装であり、自衛隊機に対して実力を持って抵抗することもなければ、地上の人々に危害を加えるおそれもないためです。気球に何らかの不具合が生じ、人口密集地などへの墜落が予想される場合には、緊急避難として撃墜することが許されるかもしれませんが、単に上空を飛行している限りでは、撃墜することはできないと考えられます。

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