「広島~浜田55分」果たせなかった高速“陰陽連絡”鉄道 島根に残る2本の未成線「今福線」

浜田~広島間は今も昔もバスで結ばれている?

 鉄道が直通しようとしていた浜田市南部の山岳地帯を、今では高速道路(浜田自動車道・1991年全通)が貫き、浜田~広島間を結ぶ高速バスが駆け抜けています。

浜田~広島間のバスは1934(昭和9)年に開業した長距離バス「広浜線」の流れを汲み、国道の整備すらおぼつかなかった頃には、中国山地を「青い暴走族」(国鉄バスの車体の色から)呼ばれるほどの爆走ぶりで駆け抜けていたといいます。

 高速道路経由となった現在の高速バスの所要時間は2時間ほどです。この区間を55分で駆け抜ける「今福線」の速達効果がいかに強烈だったかが伺えます。しかし高速運転を行うには広島県側の可部線も全面改良が必要であったため、実現はかなり難しいものでした。

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旧・旭村の中心地に近い浜田道の旭IC前に発着するバス(宮武和多哉撮影)。

 今福線の終点となるはずであった浜田駅は、高速バスの拠点としても賑わいを保ち続けていますが、駅舎は2008(平成20)年の改修・橋上化ですっかり面影が変わりました。しかし駅前ではレトロな喫茶店「日東紅茶パーラー」(1967年開店)が、今福線の建設が進んでいた昭和40年代の頃から変わりなく営業中。広島から1時間圏内になるはずだったこの駅で、往時の様子を想像しつつ、変わらない味のレモンティーを味わうのも良いでしょう。

【了】

【未成線は2つある】浜田に残る今福線の遺構群(地図&写真で見る)

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Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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