引退近づく「さんふらわあ こばると」 旧関西汽船最後の発注船 消えゆく「四国とさんふらわあ」の記憶

「寄港便」華やかなりし頃 ワイワイガヤガヤ楽しい船内

「あいぼり/こばると」は、バブル景気の余力があった時代に建造された「こがね/にしき」に比べて内装のグレードは落ちたものの、乗組員からは「一番ポテンシャルがあった」「操船性はばつぐん」「汎用性があり、非常に使い勝手が良い船」と評価されていました。実際、25年間にわたる運航において、機関のトラブルなどに悩まされることが無かったといいます。

 一方で関西汽船は本四架橋の開業や運賃競争などで採算が悪化しており、定期航路の主体である大阪・神戸~別府(別府直行便)、大阪・神戸~松山~別府(松山寄港便)、松山~小倉、不定期航路である大阪・神戸~坂手(小豆島)に集約を進めていました。

 2000年頃の年間輸送実績は旅客約70万人、車両約13万台。関西汽船は他のフェリー会社に比べて旅客の比重が大きく、阪神~別府航路は「こがね/にしき」と「あいぼり/こばると」の4隻による1日2便体制で運航が行われていました。

 企業の団体旅行や修学旅行、旅行会社が催行するツアー旅行、卒業旅行といった大量輸送に対応するため「こばると」には大部屋のツーリストが7室、2段ベッドが並ぶツーリストベッドが34室、設けられています。幅広い年齢層が関西から四国、九州に向かうために使用していたこともあり、繁忙期の船内は人であふれかえっていたといいます。

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相部屋のツーリストベッド。まだまだ相部屋が主体の時代だった(深水千翔撮影)。

 最上級の客室であるデラックスをよく見ると、ベッドの周りをカーテンで囲めるようになっていますが、これは全ての部屋が満室となった場合に、相部屋として1ベッド1人で販売することを考えていた頃の名残りです。

 繁忙期は夜行である阪神~別府便の合間に、同じ船を使って昼行の阪神~坂手便を運航しており、大阪南港フェリーターミナルではリネンの交換やベッドのセッティングなどを毎日、急ピッチで行っていたといいます。阪神~別府便のレストランは今のようなバイキング形式ではなく、最初からテーブルをセッティングし、グループごとに時間を区切って料理を提供していました。

【四国寄港の証も】相部屋が楽しそうな「さんふらわあ こばると」船内(写真で見る)

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