引退近づく「さんふらわあ こばると」 旧関西汽船最後の発注船 消えゆく「四国とさんふらわあ」の記憶
船外にも寄港時代の名残りが
「さんふらわあ こばると」のエントランスの海図はまさにこの時のもので、大阪~別府直行便だけになった今でも、神戸港、坂手港、松山観光港の文字が表示されているわけです。そうした名残りは船の外観からも見てとれます。
当初、車両の積み降ろしは大阪南港フェリーターミナルと松山港では船首側、神戸港中突堤では左舷側、別府港では右舷側から行っていました。そのため「あいぼり/こばると」では、各港に対応するため車両ランプが船首と左右両舷の3か所に設置されることになりました。企業の貸し切り便として和歌山港に入港したこともあり、ニーズに応じてさまざまな運用が可能な設計になっています。
現在は大阪・別府両港ともに右舷から接岸するため、新造船の「くれない/むらさき」は車両ランプや徒歩乗船口を右側にしか設けていません。「あいぼり/こばると」も大阪~別府直行便のみとなり、横付けする方向が限られるようになったため、さんふらわあターミナルのボーディングブリッジに対応した乗船口は右舷にしか整備されませんでした。
まもなく消える関西汽船時代の記憶
2011年に関西汽船とダイヤモンドフェリーが合併し、新会社「フェリーさんふらわあ」の発足に伴って、両社に所属するフェリーのファンネルは、商船三井グループのオレンジ一色に塗り替えられました。
ただ「さんふらわあ こばると」の船内には関西汽船時代の赤・白・赤のファンネルマークが描かれたイラストや写真が飾られており、瀬戸内海のさまざまな港に寄りながら大阪と別府を結んでいた時代を感じることができます。名門として知られた関西汽船の最後のフェリーに乗ることが出来る日も残りわずか。皆さんもぜひ乗船してみてはいかがでしょうか。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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