生き残りたければ穴を掘れ! ウクライナの戦いで見直される「塹壕」の大切さ 古来の戦法は万能か?
100年前の戦車出現に匹敵するか? ドローン戦術
このように塹壕を構築するのは意外と大変。ただ、一方で塹壕は用意しておくと、その効果は抜群です。たとえば、敵の砲弾が降り注いだとしても、穴の中に退避できれば、直撃さえしなければ生存率は格段に上がります。通路部に関しても、直線的にせず数mおきに曲がり角を設けるなどすれば、爆風による被害も最低限に抑えることが可能です。
いまから100年ほど前の第1次世界大戦では、西部戦線において大規模な塹壕戦が繰り広げられ、最終的にイギリスやフランスなど連合国とドイツ帝国の双方で5000km近くもの塹壕が掘られたといわれています。
ゆえに、戦闘は長期にわたって膠着するようになり、多数の犠牲者を生みました。その結果、前線突破用の「新兵器」として戦車が誕生するに至ったのですが、今般のウクライナ侵攻では、当時の戦車に相当する存在として、“新兵器”ドローンが多用されるようになっています。このドローンの活用で、ひょっとしたら塹壕戦のあり方にも変化が起こるかもしれません。
ドローンがあれば、従来把握することが難しかった敵の塹壕内の配置を、空から確認できるようになります。さらには、ドローンに砲弾を抱えさせて目標上空で投下、ピンポイントで攻撃するという戦術まで誕生しています。
今回、ロシアのウクライナ侵攻によって、ドローン対策が必要であるという認識は、各国の軍事関係者に広まりました。ただ、これまで多用されてきた砲弾やロケット弾などの攻撃に対して、いまだ塹壕が高い有用性を持っていると改めて周知されたのも、ウクライナ侵攻の特徴ということができそうです。
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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
ウクライナ戦争はとても現代戦とは呼び難いものだから何も驚く話ではない。「量を重視した戦い」をしたからこそ苦戦しているのであって脅威と再認識されるようなものではない。ドローンの重要性が認識されたのは事実だが対空部隊を付随させられる現代軍同士の戦いだったら今ほど効果はない。
どれほど技術が発展しようが
最終的には一次大戦のような泥臭い塹壕戦と砲撃戦になるなんてどれほどの人間が考えたか