「次期戦闘機とMSJの両立」という無謀 三菱に背伸びさせた日本の“見通しの甘さ”

開発中止が正式決定された三菱スペースジェット。初の国産ジェット旅客機を製造するプロジェクトは、並行して進んでいた次期戦闘機の開発も密接に絡んでいます。失敗の原因は三菱というより、政府の見通しの甘さと見ることもできます。

自衛隊機の開発では経験がなかったコト

 これがスペースジェットの開発に悪影響を及ぼしたと証明することはできませんが、国内外のメーカーが開発・製造した多数のシステムやコンポーネントをインテグレーションする(まとめあげる)能力、言い換えれば経験の不足が、スペースジェット開発中止の大きな要因のひとつになったことは確かだと思います。

 これは、三菱も国内で携わってきた従来型の自衛隊機の開発とは異なる方法です。これまでは、機体やエンジン、レーダーや管制装置などのアビオニクスといった構成部位ごとに、防衛省が企業と直接契約して開発されてきました。

 しかし「優れたステルス性能」「高度なセンシング技術」「量に勝る敵に対する高度ネットワーク戦闘」を求められる、F-2を後継する新戦闘機は、機体やエンジン、アビオニクスといった構成部位の高度な連携が必要です。万が一不具合が生じた場合、これまでの手法では航空自衛隊の要求を反映させることが困難であることから、エンジンの単独で完結する作業を除くすべての開発作業を1社が統括し、その企業が他の企業に開発を委託した技術をインテグレーションして完成させる必要が生じるため「シングル・プライム」方式で開発されることとなり、三菱重工業はそのインテグレーション企業に選定されていました。

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先進技術実証機X-2。2016年に初飛行した(画像:防衛装備庁)。

 自由主義陣営諸国には多数の航空機メーカーが存在していますが、実のところ欧米の主要なメーカーでも、年々高度で複雑になっている戦闘機と旅客機の開発と製造を手がけている企業はほとんどありません。

 F-2を後継する新戦闘機の開発は、イギリス、イタリアとの共同プロジェクトである「GCAP」(Grobal Combat Air Programme/グローバル戦闘航空プログラム)へと発展していますが、仮に外国との協力を視野に「我が国主導で開発」という方針が堅持されていた場合、三菱重工業の手に余るものとなっていた可能性が高かったと筆者は思います。

【え…】幻になった「ANA塗装をまとったMSJ」(写真で見る)

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コメント

2件のコメント

  1. 航空宇宙産業を再編してないのは日本だけ。各国とも過剰なくらいに統合して巨大化してるのに、従来の体制のまま割って入ろうなんて無理な話。しかも子会社にやらせるっていう軽い扱い。

    もっとも液晶や半導体を見ると、統合してもダメそうな感じはある。

  2. 「型式証明で苦戦」と「旅客機のシステムインテグレーションの経験不足」を結びつけるのは飛躍しすぎ。

    そもそもMSJの大きな延期の理由にシステムインテグレーションが由来のものは無いのでは? 私が知る限り、型式証明をとるために必要な「適切な要件定義(耐空性)」と「第三者から安全な設計を行っていることが分かる証拠」を残す組織づくりに失敗していたことが原因だったと思います。

    自衛隊機には型式証明はありませんし、FAAも無関係ですからMSJで型式証明がとれなかった点は次期戦闘機開発にさほど影響ないでしょう。

    まあ、三菱のプロジェクト運営や開発プロセスって大丈夫なん?という疑念はごもっともですが。

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