「次期戦闘機とMSJの両立」という無謀 三菱に背伸びさせた日本の“見通しの甘さ”

開発中止が正式決定された三菱スペースジェット。初の国産ジェット旅客機を製造するプロジェクトは、並行して進んでいた次期戦闘機の開発も密接に絡んでいます。失敗の原因は三菱というより、政府の見通しの甘さと見ることもできます。

「MSJをやりながら次期戦闘機」に懐疑的な空気

 三菱重工業もそれは認識していたようで、新戦闘機の技術実証機である「X-2」の開発が難航した際には、三菱航空機に出向させていたエンジニアを本社に復帰させています。

 三菱航空機の社内にはスペースジェットの開発が完了していない段階で、新戦闘機開発のためにエンジニアを三菱重工業に復帰させること、さらに言えば新戦闘機のインテグレーション企業に立候補したこと自体に懐疑的な空気も存在していました。

 三菱重工業には「防衛事業はビジネスではなく、ご奉公である」という社風があり、新戦闘機の開発に背を向けるという選択肢はなかったと筆者は思いますが、企業の身の丈に合わない背伸びと政府の見通しもまた、スペースジェット事業の足を引っ張ったのではないかと思います。

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決算説明会でスぺースジェットの開発中止を発表する三菱重工業の泉澤清次社長(竹内 修撮影)。

 会見に出席した三菱重工業の泉澤清次社長は、「何の技術が不足していたことが、開発中止を決断させたのか」という記者からの質問に対して、やや強い口調で「何か一つの要因によって中止の決断が下されたわけではない」と述べています。

 三菱重工業と三菱航空機には不足していた技術や経験も多々あったものと思いますが、スぺ-スジェットの事業化失敗の最大の理由は、国家としての航空産業の成長戦略の欠如にあったのではないかと、このやり取りを聞いて改めて思いました。

【了】

【え…】幻になった「ANA塗装をまとったMSJ」(写真で見る)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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コメント

2件のコメント

  1. 航空宇宙産業を再編してないのは日本だけ。各国とも過剰なくらいに統合して巨大化してるのに、従来の体制のまま割って入ろうなんて無理な話。しかも子会社にやらせるっていう軽い扱い。

    もっとも液晶や半導体を見ると、統合してもダメそうな感じはある。

  2. 「型式証明で苦戦」と「旅客機のシステムインテグレーションの経験不足」を結びつけるのは飛躍しすぎ。

    そもそもMSJの大きな延期の理由にシステムインテグレーションが由来のものは無いのでは? 私が知る限り、型式証明をとるために必要な「適切な要件定義(耐空性)」と「第三者から安全な設計を行っていることが分かる証拠」を残す組織づくりに失敗していたことが原因だったと思います。

    自衛隊機には型式証明はありませんし、FAAも無関係ですからMSJで型式証明がとれなかった点は次期戦闘機開発にさほど影響ないでしょう。

    まあ、三菱のプロジェクト運営や開発プロセスって大丈夫なん?という疑念はごもっともですが。

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