国鉄103系引退で注目「和田岬線」どんな路線? 今年で123歳 市が廃止提案したことも

御年123歳! でも神戸市としては…

 そもそも和田岬線は、線路敷設の資材輸送を行うために貨物線として建設されました。貨物営業の開始は1890(明治23)年、旅客営業の開始は1911(明治44)年です。1899年には兵庫運河の開削に伴って、現存最古の鉄道可動橋「和田旋回橋」が設置されています。また、今は廃止されていますが、1912年には中間駅として鐘紡前駅が設置されました。

 かつては和田岬駅から先、三菱重工神戸造船所の敷地内まで専用線として線路が続いていたほか、神戸市中央卸売市場や兵庫港へ伸びる兵庫臨港線が存在し、貨物で大いに賑わいました。日本の造船所が建造量世界一になった高度経済成長期には、和田岬線の車両は文字通り人であふれていたといいます。

 しかしトラック輸送への転換や兵庫港での取扱量の減少などが重なり、1984(昭和59)年に兵庫臨港線が廃止。さらに三菱重工神戸造船所の商船建造撤退や、地下鉄海岸線の開業といった出来事が続いており、和田岬線を取り巻く環境は厳しいように見えます。

 2011(平成23)年2月には、兵庫運河を利用した周辺地域の活性化を目指す神戸市が、JR西日本に対して、あえて和田岬線の廃止を求める要望書を提出しました。

 神戸市が設置した兵庫運河活性化会議が取りまとめた「兵庫運河周辺地域のまちの将来像」では、和田岬線を廃止し、散策やジョギングを行えるプロムナードにした場合のイメージが盛り込まれています。ただ、これには累積赤字が1000億円超にまで膨らんだ地下鉄海岸線の利用者を増やしたいという思惑もあるようです。

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兵庫駅、和田岬線乗り場(深水千翔撮影)。

 しかし、兵庫運河活性化会議が開催したワークショップでも、和田岬線の活用を前提とした意見が出されている上、JR西日本としても黒字路線を廃止する理由がないため、今後も路線は残るのではないでしょうか。

 現在、和田岬線には通勤客の輸送の他に、川崎車両本社(旧川崎重工業兵庫工場)で製造された新しい鉄道車両を全国各地へ運ぶ甲種輸送の出発点としての役割を持っています。スカイブルーをまとった103系のラストランに向け注目が集まる同路線。これを機会に乗ってみてはいかがでしょうか。

【了】

【え…路線網スゴ!】和田岬線から延びていた無数の貨物線&市電(地図)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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