「オラオラ顔」もう限界? 新トレンド「グリルとボディの融合」は受け入れられるのか
オラオラ感はないけど…「グリルレス」へのアンチテーゼ?
身近なところでいえば、2021年に登場したホンダのSUV「ヴェゼル」。グリルをボディと同色とする「インテグレーテッドグリルデザイン」を採用しました。そして2022年にはレクサスからEVである「RZ」が登場。こちらは明確に「スピンドルボディ」と謳い、それまでのスピンドルグリルとボディが融合するデザインを採用していたのです。
また、2023年2月に公開された新世代のプジョーのセダン「508」も、グリルとボディが融合するようなデザインとなっています。グリルとボディの融合は、まさにデザインの最先端と言えるでしょう。
では、こうしたデザインは、なぜ生まれたのでしょうか。トレンドの誕生は、世の中の空気が生み出すもの。そこで考えられるのがEVという存在です。今、クルマ業界の中で話題の中心になるのがEV。そしてEVにはエンジン車にはない、デザイン上の大きな特徴があります。
それが「グリルレス」です。EVは膨大な熱を発する内燃機関(エンジン)がありませんから冷却器は小さくてかまいません。そのためクルマのフロント部に開口部が必要なく、そのための金属枠=グリルが必要ないのです。テスラの各モデルやフォルクスワーゲンのI.Dシリーズ、トヨタの「bZ4X」などは、どれもグリルがありません。
もちろん、BMWのEVのように大きなグリルもそのまま、というケースもありますが、EVという新しい存在のデザインが、グリルとボディの融合という新しいデザインのトレンドに影響を与えているというのは、予想としても、それほど大きく外れてはいないのではないはず。
“オラオラ”グリルは、限界が見えています。単純に、もう、これ以上に大きくできないのです。それでも、新しさを演出したいと思えば、話題のエッセンス=EVを取り入れたいという流れになるのもおかしな話ではありません。
グリルとボディの融合は、新しい提案です。そのため人気が出るか出ないかは、これからの話。ユーザーの好みは、意外とコンサバだったりもします。ユーザーは、大きなグリルに飽きているのか、それとも“オラオラ”顔はまだまだ支持されるのか。新しいデザインを採用したモデルの売れ行きに注目です。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
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