自衛隊は「トヨタ車」を持参 スーダン邦人救出に成功 なぜ「邦人救出専用車」は使われなかったか

邦人救出用装備「輸送防護車」とは?

 一方、中央即応連隊には在外邦人救助のための専用車ともいえる「輸送防護車」も8両配備されています。輸送防護車はオーストラリアで製造された4輪駆動タイプの装甲車で、拳銃弾や小銃弾の直撃に耐えられる装甲と、至近距離で地雷や即席爆弾(IED)が爆発しても、車内は無傷な構造を有しています。

 最も特徴的なのは、車体下部がV字になっている点でしょう。この形状によって、車体下部で地雷や仕掛け爆弾が爆発しても、その爆風を車体の外に受け流すようになっています。ゆえに防御力は、前出の高機動車II型はもちろん、陸上自衛隊で最も多用されている装輪装甲車である「軽装甲機動車」よりも優れていると言えるでしょう。

 しかし、今回のスーダン邦人救出は、輸送防護車ではなく高機動車が使われたのでしょうか。

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今回派遣されたC-130H輸送機の同型機(武若雅哉撮影)。

 車体サイズで言えば、高機動車と輸送防護車、両方とも今回派遣された航空自衛隊のC-130輸送機やC-2輸送機に積載することができます。収容人員も、高機動車は前述したように10名。対する輸送防護車も同じく最大10名が乗車可能です。

 10名のうち3名が自衛官(運転手、車長、後方警戒要員)だとすると、ほかに7名の民間人を乗せることができる計算になります。となると、より安全性が高い輸送防護車の方が良かったように思えます。それでも高機動車が選ばれた理由は、輸送にかかる手間だと考えられます。

 今回の任務では、航空自衛隊のC-130H輸送機とC-2輸送機、そしてKC-767空中給油機輸送機が各1機ずつジブチに派遣されました。そのうち、車両の搭載が比較的容易なのはC-130H輸送機とC-2輸送機です。KC-767にも搭載できないことはないのですが、車両をリフトアップする必要があり、車高の条件もあることから候補からは外れます。つまり、KC-767は退避した在外邦人や陸自の隊員を運ぶために、また重量物を運ぶ2機の輸送機に対する空中給油任務に使用されたと推察されます。

【C-2積載訓練の様子も】レア装備「輸送防護車」や高機動車II型ほか(写真)

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コメント

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2件のコメント

  1. KC-767も行ってるので、C-2に貨物満載で空中給油も不可能じゃないと思うし、そもそもC-130の航続距離が短いから、それに合わせた中継ポイント設定してるはず。

    • 空中給油は可能ではあってもトラブルを考えれば予備機を持ってかなきゃいけないだろう。
      そうなると倍々ゲームで派遣機数や装備、人材も倍は必要になるのでは?
      それに速度差もあるからバラバラで行くわけにもいかないし、燃料も現地調達しようにもNDS(防衛省規格)に合わせるの調査もいれば現地の備蓄も考えないといけない。
      それで予算は別にしてもどれだけ早く到着するか?到着が速いか遅いかでオペレーションの損得を考えればそこまで急ぐ状況ではなかったのでは?