“里帰り九五式軽戦車”で発見! 偽装した「秘密のスイッチ」の目的とは 最新アメリカ戦車にもつながるアイデア装備

「秘密のスイッチ」その使い方は?

 イギリスに渡った九五式軽戦車「4335」号車ですが、2017年ごろから冒頭のNPO法人「防衛技術博物館を創る会」が中心となり、同戦車を国産機械産業の重要な歴史遺産として位置づけ、その里帰りを求める活動が始まります。

 そして、2度にわたるクラウドファンディングにより多くの寄付金と支援者を得たことで、ポーランドでのレストア作業を終えた九五式軽戦車をイギリス人コレクターから買い戻すことに成功。2023年4月16日に御殿場市で行われたお披露目会では、集まった支援者とNPO法人の賛助会員約600名に対して、その勇姿を見せたのでした。

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里帰りを祝う式典や参加者による記念撮影を終えてから、5コールのカウントダウン後に一発で快調にディーゼルエンジンを始動させる九五式軽戦車(吉川和篤撮影)。

 こうして里帰りを果たした九五式軽戦車ですが、筆者(吉川和篤:軍事ライター/イラストレーター)が注目したのは、車体後部に設けられた、ある知られざる装備です。それは車体後部のエンジンルーム後面左、ナンバープレートの右側に設置されたボタン状のもの。一見、車体の随所に打たれたリベットのひとつにも見えますが、よく観察すると他のものとは大きさや形状が微妙に異なり、周囲には少しすき間も空いています。

 実は、これはリベットに擬装した一種のスイッチなのです。

 このスイッチを押すと、車内右側の操縦席左にある警報器のブザーが鳴る仕組みになっています。何のためかというと、これを使えば外にいる兵士が車内へ警報を発したり、ハッチを閉めた状態から車長を呼び出したりすることが可能でした。またこれは推測ですが、連続してブザーを鳴らすことで短いモールス信号で文章を伝えるといった使い方もしていたかもしれません。

 ただし、教育訓練や演習などで日ごろから戦車と行動を共にしていた機動歩兵(自動車化部隊)は、この連絡装置を理解して戦場で活用していたものの、戦車などとあまり連携したことのない一般の歩兵などはその仕組みを知らず、結局は車上によじのぼりハッチを開けて車内に怒鳴る兵士もいたと聞いています。

 とはいえ、こうした装備は同時期の他国戦車にはあまり見られないため、九五式軽戦車の特徴でもあります。それらも含めて現存する「4335」号車は、当時の日本の機械産業レベルや兵器としての運用方針を示す「生きた見本」といえるでしょう。

【どう見てもリベット…】「秘密のスイッチ」と使い方&車内のブザーの位置(写真で見る)

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