戦車の砲身なぜ真ん中“モッコリ”? ぶっ放したあと「遅れて出る煙」総火演で注目!
射撃後に遅れて出る煙に注目!
作動原理ですが、発射された砲弾が砲身内を通過するときに、排煙機は砲身に開けられた穴から燃焼ガスの一部を取り込みます。この時に取り込まれた高圧のガスは、砲身から砲弾が抜けるまで保持され、砲身内の圧力が低下すると排煙機内の燃焼ガスが砲身内へと戻されます。
この時点で排出される燃焼ガスはまだ高い圧力を持っているため、先に発射された砲弾が通過した際に発生したガスをけん引して砲口へと流れていき、そこから自然に出ていくのです。
この原理だと、発射直後に砲身基部の閉鎖器(砲弾の装填・排莢で開閉する栓)を開いても燃焼ガスは圧力がかかっている砲口方向へと自然に向かっているため、燃焼ガスが戦闘室内に逆流することはありません。
もちろん、発射時に発生する燃焼ガスを完璧に排出できるワケではありませんが、人体に影響が出る濃度ではないため、乗員からすればいわゆる「硝煙臭」と呼ばれる火薬特有の臭いを感じる程度で済みます。
ただし、仮に排煙機のメンテナンス不足だったり、あるいは設計が悪かったりした場合には、燃焼ガスがうまく排出されず、戦闘室内に有毒ガスが充満してしまいます。そうなると、乗員は居ても立っても居られず、ハッチから顔を出すことになるでしょう。
ちなみに、この排煙機から排出されるガスの様子は、国内最大の実弾射撃演習「富士総合火力演習」、通称「総火演」でも見ることができます。
2023年の総火演は5月27日(土)に行われます。当日は陸上自衛隊広報チャンネルでライブ配信される予定のため、ぜひスマートフォンやパソコンなどで戦車の射撃を見てみてください。射撃を終えた戦車の砲身先端から、発砲炎の後に少しだけ遅れて排出されるガスが確認できるはずです。それを見ることができれば、排煙機が機能していることを理解できるでしょう。
【了】
Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)
2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。
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