戦車の砲身なぜ真ん中“モッコリ”? ぶっ放したあと「遅れて出る煙」総火演で注目!
74式戦車や90式戦車などの主砲は、砲身の中ほどに膨らみがあります。一方で昔の戦車にはありません。この部分は何のために設けられているのでしょうか。ないと乗員に危険が及ぶ可能性があるようです。
比較的新しい戦車は砲身の途中で“モッコリ”
まっすぐと伸びた戦車の砲身。しかしその形は、陸上自衛隊の74式戦車や90式戦車のだと、まっすぐの筒ではなく、砲身の中央部分がモッコリしています。その一方で、昔の戦車砲などを見ると、そのような形状にはなっておらず、段差のないストレートな砲身ばかりです。
なぜ現用戦車の砲身にはこのような盛り上がりがあるのでしょうか。
戦車の砲弾は、内部に大量の「装薬」と呼ばれる火薬が充填されています。この装薬が爆発するエネルギーで重く大きな砲弾を撃ち出すのですが、装薬は燃焼すると大量の有毒な燃焼ガスを発生させます。ということは、砲弾を発射するごとに大量発生した有毒ガスを外に排出しないと、乗員に悪影響を与えてしまいます。
有毒ガスのほとんどは、発射時に砲身の先端(砲口)から車外へと噴き出されますが、完全には抜けきらず砲身内にも滞留します。この滞留した有毒ガスが砲塔内、すなわち戦闘室に逆流してしまうと、そこで作業する装填手を始めとした乗員が吸い込んでしまう可能性があります。
乗員を危険な状態に晒さないようにするためには、有毒ガスの逆流を防ぐことが必須です。そこで設けられているのが、砲身中程にあるモッコリ部分なのです。
このモッコリ部分の正式名称は「排煙機」(エバキュエーター)といいます。74式戦車を例にすると、この中には砲身側面に開いた7個のガス噴出口があり、それらを覆う形で円筒形の部品がカバーのように取り付けられています。
では、冒頭に記したように昔の戦車砲にはなぜ、このような装置がなかったのでしょうか。排煙機が登場する前の戦車は、換気口や換気扇などを用いて戦闘室内の空気を循環させ、場合によっては砲塔各所に設けられたハッチを開けるなどしてガスを車外に排出していました。
しかし、第2次世界大戦が終わり、東西冷戦が始まると、核兵器による攻撃も考える必要に迫られます。それは戦車も例外ではなく、乗員を放射能やそれを帯びた粉塵から守る能力が求められるようになりました。
ただ、従来の換気システムは、それこそ単なる開口部やファンでしかないため、乗員を保護することができません。そこで登場したのが、砲身に設ける構造の排煙機です。
コメント