ベトベトしてそう? 陸自74式戦車の「粘着榴弾」が使われなくなったワケ 飛び散るのは弾薬ではなく

2023年5月の富士総合火力演習が一般公開としては最後の射撃になると言われている74式戦車ですが、この戦車にしか設定されていない砲弾の種類があります。粘着榴弾、通称HEP弾と呼ばれる特殊な砲弾の特性について深掘りしました。

戦車の砲弾には種類あり

 富士山のふもとに広がる東富士演習場で、2023年5月27日(土)に開催予定の「富士総合火力演習」。陸上自衛隊にとって最大規模の実弾射撃演習で、様々な装備が次から次へと姿を現し射撃を行います。なかでも登場とともに注目を集める“主役”といえる装備は、戦車でしょう。

 2023年現在、陸上自衛隊は74式戦車、90式戦車、10式戦車の3車種を運用しています。各戦車とも「対戦車榴弾」や「徹甲弾」など複数の種類の弾を搭載しており、状況に応じて適切だと乗員が判断した砲弾を任意で選択して発射することができます。実際、総火演でも対戦車榴弾と徹甲弾(演習用徹甲弾)、双方の射撃を見せることがあります。

 ただ、かつてはこれらのほかに「粘着榴弾」なる砲弾も存在しました。これはいまや、ほぼ見かけなくなってしまった弾種ですが、各々どう違うのでしょうか。

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恐らく陸上自衛隊の戦車で最も多くHEP弾を撃ったであろう74式戦車。対峙する戦車の装甲が複合化されてきたため、HEP弾を用いる場面は減少傾向だ(武若雅哉撮影)。

 まず「対戦車榴弾」ですが、こちらはいわゆる化学エネルギー弾と呼ばれる砲弾で、目標となる敵の装甲に当たった時に「モンロー/ノイマン効果」と呼ばれる化学反応を発生させ、高速の衝撃波とジェット噴流によって装甲面を貫徹する能力を持っています。

 この「モンロー/ノイマン効果」とは、円錐形に成形した炸薬を爆発させることによって、その円錐の中心に向かって爆発力を集中させる効果のことです。

 対戦車榴弾の場合、弾頭内に充填された炸薬の前に薄い金属の内張りを作ることで、爆発時に薄い金属が円錐の中心部へ集中し、超高速の噴流が発生します。その噴流のパワー(メタルジェット)で装甲に穴を開け、車体と乗員にダメージを与えるようになっています。

 一方「徹甲弾」とは、運動エネルギーで敵戦車の装甲などを貫く砲弾です。徹甲弾は、高速かつ高質量の物体を目標に直撃させることで、その質量(運動エネルギー)で強制的に装甲を打ち破り、車体と乗員にダメージを与えるものです。

【見れば違いが明らか】現在主流の「対戦車榴弾」「徹甲弾」と消えつつある「粘着榴弾」を見比べ

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