北朝鮮の“衛星”どう破壊 地対空ミサイル「PAC3」は何がスゴイのか ウクライナでは救世主に

航空自衛隊が運用するPAC-3は最新版 将来はさらなる能力向上も

 PAC-3はPAC-2で使用されているものよりも直径が小さいミサイルを使用しており、PAC-2では発射器にミサイルを4発しか搭載できなかったものの、PAC-3では16発を搭載可能です。またPAC-3は、弾道ミサイルの迎撃に関して「直撃破壊(ヒット・トゥ・キル)」という方式を採用しています。これは、迎撃ミサイルを目標に直撃させて破壊するというもので、これにより確実に弾道ミサイルを無力化することができます。

 そして、このPAC-3のなかでも現在最新のバージョンが「PAC-3MSE(ミサイル部分強化型)」です。このPAC-3MSEでは、従来のPAC-3と比べて射程距離および射高(迎撃可能な高度)が大幅に向上しており、より広い範囲を防護できるようになっています。ただし、ひとつの発射器につき搭載可能なミサイルの数は、12発に減少しています。

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レイセオン・テクノロジーズ社が開発した「LTAMDS(エルタムズ)」。極超音速兵器など、高度化する脅威に対抗するレーダーだ(画像:レイセオン・テクノロジーズ)。

 ところで、日本では航空自衛隊がPAC-3を運用しています。現在は従来から運用してきたPAC-3をPAC-3MSEに順次アップグレードしており、すでに実戦部隊への配備も行われています。さらに、2022年12月に決定されたいわゆる「安保関連3文書」のなかでは、PAC-3のレーダーを最新鋭のバージョンに変更することが明記されました。

 このレーダーとは、アメリカの大手防衛関連企業であるレイセオン・テクノロジーズ社が開発した「LTAMDS(エルタムズ)」のことです。それまでのパトリオット用のレーダーでは、固定式の大きなアンテナがひとつ配置されているのみでしたが、LTAMDSではそれに加えて後方に小さなアンテナが2つ追加されました。これにより、LTAMDSは全周360度を常に監視することができます。また探知距離についても、従来と同じ大きさのアンテナながらその出力は2倍以上となっており、大幅に向上しています。

 自衛隊もPAC-3を南西諸島などに展開させています。北朝鮮の“衛星”の迎撃が、実際に行われるような状況が訪れないことを祈るばかりです。

【了】

【どう違う?】PAC-3と能力向上型PAC-3MSE 写真で比較

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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