「LCCの塗装ってなんか派手」な風潮なぜ “飛行機といえば白”はもはや過去の話なのか
どんどん種類豊かになる「後発系航空の塗装」
たとえば、日本航空(JAL)の「鶴丸」は明らかに日の丸を連想でき、国内線でライバルに成長しつつあった全日空(ANA)は、対になる青色系統のモヒカン「ブルー」をまとっていたのは、ビジネスレース上の自然な流れだったでしょう。
対する“後発組”のLCCなどは、“先発組”のカラーリングのパターンを避けなければ目立ちません。ヴそういうわけで、派手なカラーリングの航空会社も現れました。低運賃や割り切ったサービスで旧来のビジネスモデルから脱却したなら、さらに“常識”を打ち破ろう――カラーリングが変わっていくのは自然の流れでした。
たとえば、日本でも(厳密にはLCCではないものの、運賃が抑えられた後発系航空会社である)スターフライヤーのように黒色の塗装をする航空会社が現れ、FSC系列でも、安い(cheap)のアナグラム(単語の語順を入れ替えること)で名づけられたANAグループのピーチ(peach)のように、言葉遊びも連想できる社名と、ピンクのカラーリングを施した航空会社も現れました。
一方で海外では、かつて存在していたタイのLCC、ノックスクートは機種にくちばしを描き、欧州ではどことなくピーチのようなカラーリングが特徴のLCC、ウィズエアーなども登場しています。
現在、LCCはかつての近距離路線から長距離路線へ進出し、FSCがLCCを子会社として立ち上げるのも一般的になってきました。こうした中、旅客機のカラーリングはどのように変わっていくでしょうか。
カラーリングはいったん決まると長期間使われます。高いデザイン性で他社より目立ち、なおかつ「乗ってみたい」と思わせたり、楽しさと安心感を与えたり――思いつくだけでもこれらの要素を抱えるだけに、カラーリングはけっして地味にならず、一層趣向を凝らしたデザインがこれからも登場するのは間違いありません。
同時にそれは、シンプルな白色が逆に目立つことになるかもしれません。JAL系列のZIPAIRはこうした“逆張り”を狙った可能性もあります。趣向を凝らすか、あえてシンプルにするか。カラーリングにも航空会社のし烈なレースを見ることがでます。
【了】
Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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