長~~い胴体に何積んだ?「C-133」名機C-130ハーキュリーズと同世代 米ソ軍拡時の“知られざる戦略兵器”

アメリカの宇宙ロケット開発も支えた名機

 また、NASAによる「ジェミニ」「マーキュリー」「アポロ」といった各宇宙計画で、宇宙カプセル打ち上げ用ブースターとして使用される「アトラス」「タイタン」「サターン」のロケット部分を、フロリダ州にあるケネディ宇宙センターまで空輸するのにもC-133は多用されています。さらに、地球に帰還して回収されたアポロ・カプセルをアメリカ本土に空輸するのも、本機の重要な役割でした。

 C-133は、輸送機として優れた性能を持っていたものの、前述したように戦略兵器である弾道ミサイルを空輸するといった本機でなければこなせない任務を負っていたうえ、機数が少なく貴重だったので、1960年代から70年代前半にかけてアメリカが大きく関与していたベトナム戦争にはあまり投入されていません。

 しかし本機の大きなペイロードの有用性は同戦争を通じて確認され、高い評価を得るとともに、後継となったロッキードC-5「ギャラクシー」の開発に際して、大いに参考にされたといわれています。

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C-133「カーゴマスター」の飛行する姿(画像:アメリカ空軍)。

 ちなみに、C-133は太平洋横断飛行で当時の軍用輸送機としての非公式記録も打ち立てています。日本の立川基地(現在の陸上自衛隊立川駐屯地)とアメリカ本土カリフォルニア州のトラヴィス空軍基地間8288kmを、無着陸飛行で17時間20分、平均時速478.3km/hで飛びきったのです。

 このように、アメリカ空軍において、長らく弾道ミサイルのような「長物」を積載可能な輸送機として重宝されたC-133でしたが、長年の酷使によって機体疲労も蓄積していたことなどから、巨大輸送機C-5「ギャラクシー」が就役したのを機に、1971年に全機退役しました。

 名作映画『ライトスタッフ』にも描かれたように、東西冷戦の最中の米ソ宇宙開発競争は熾烈なものでした。そういったなか、「裏方」として弾道ミサイルや宇宙ロケットの空輸に活躍。まさしくC-133「カーゴマスター」は、アメリカの弾道ミサイルや宇宙ロケット開発における「縁の下の力持ち」としての大役をはたした、“知られざる名機“ と言えるでしょう。

【了】

【座薬…?】これがC-133に積み込んだ「巨大兵器」です(写真)

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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