救急車っていくら? 巨大な「スーパーアンビュランス」より高価な車両とは 価格を左右する“中身”
特注だから高い、特殊な救急車たち
スーパーアンビュランスよりも高価格な救急車、それは「EV救急車」と「陰圧式救急車」です。
EV救急車は2020年3月に導入された車両で、その名の通り、EV(電気自動車)仕様の救急車です。
ベース車両は日産のパネルバン「NV400」で、特注の電気自動車仕様を救急車として架装しています。メリットは2つあり、エンジン車と比べて低振動・低騒音のため、搬送する傷病者の負担軽減が可能なこと、そして排気ガスが出ないことです。
2023年7月現在、EV救急車は池袋消防署に配備されています。ただ、導入事例はこの1台のみ。前述したように特注車で、かつ電動ストレッチャーなどを備えているため、その調達価格は約8100万円です。今後、普及し台数が増えれば、徐々に価格が下がるかもしれません。
そして、このEV救急車よりも調達価格の高い救急車というのが、「陰圧式救急車」になります。
陰圧式救急車は、感染力の高い結核や新型コロナ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、水痘、麻疹などに罹患した傷病者の搬送を想定して導入された特殊救急車です。
ベースにはいすゞの小型・中型トラック「エルフ」の4輪駆動仕様が用いられています。運転室と患者室のあいだは隔壁で隔てられており、患者室を密閉し、車外と気圧差を生じさせることで、空気感染を防ぐことができます。また患者室への空気の出し入れはフィルターを通して行う構造となっています。
なお、メーカーである株式会社赤尾の説明によると、製作にあたっては気密性を高めるため、手作業でひとつひとつ小さな隙間を埋めながら造っていくそうです。
ほかにも、体重の重たい力士や高身長の外国人でも搬送できるようになっており、それに合わせてストレッチャーも重体重対応型のものが備えられています。
こうした特殊な構造ゆえに、陰圧式救急車の調達価格は約8600万円と「スーパーアンビュランス」よりも700万円ほど高くなっています。
全国の消防本部には、合計すると非常用を含め約6500台もの救急車があります。これらのうち前出したような特殊救急車はごく少数ですが、もしかしたら今後の情勢次第では増備されるかも。そのような形で製造台数が増えたら、EV救急車や陰圧式救急車もコストダウンが図られるかもしれません。
【了】
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