青函トンネルで新幹線が「スロー走行」のワケ これでも速くなった?「フルスピード化」の効果と“壁”
北海道新幹線は、青函トンネル内の最高速度が160km/hに抑えられていて、試験的にスピードアップしても210km/hです。なぜ高速で走れないのでしょうか。その経緯を振り返ります。
最初は140km/hとかなり遅かった
お盆休みの時期にあたる2023年8月12日から16日までの5日間、青函トンネルを走行する北海道新幹線の列車は青函トンネル内を210km/hで走行することになりました。通常、この区間の最高速度は160km/hなので、50km/hのスピードアップになります。
これによって青函トンネル内の所要時間は現行からおよそ3分短縮されます。対象となる列車は始発から15時半頃までの間に青函トンネル内を走行する新幹線、上下各7本の計14本です(8月15日は上り8本、下り7本の計15本)。
スピードアップが利用客に恩恵をもたらすのは間違いありませんが、そもそもなぜ青函トンネル内の最高速度は160km/hに抑えられていて、スピードアップしても210km/hが限度なのでしょうか。その経緯を振り返ります。
1988(昭和63)年に開通した青函トンネルは、もともと高速走行が可能な新幹線の走行を前提として建設されました。しかし開業時点で、青函トンネル内に新幹線を走らせる計画はまだ決定しておらず、在来線用のトンネルとして、特急「スーパー白鳥」が最高140km/h、貨物列車は最高110km/hで走行。これを踏襲した形で2016年に開業した北海道新幹線の列車の最高速度も、まずは140km/hとなったのです。
青函トンネル内は貨物列車も走行しているため、速度引き上げは簡単にはいきません。青函トンネル内を新幹線がフルスピードの260km/hで走行すれば、前を走る貨物列車に追いついてしまう可能性があります。また、高速走行する新幹線が貨物列車とすれ違う際に、風圧で貨物列車のコンテナが変形するリスクも指摘されています。
さらに、青函トンネル内の保守・点検作業時間は2時間半程度に設定されていますが、新幹線が高速で走るとなると、ほかの新幹線区間と同様のレベルで作業を行う必要があります。そうなると作業時間は6時間程度が必要となります。作業中は貨物列車も走行できないので、貨物列車の円滑な運行にも支障が生じます。
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