元「STU48号」でPAC3ミサイル輸送も!? 自衛隊も愛用 劇場船転用のフェリーを見てきた!
北朝鮮の弾道ミサイル対処にも活躍
こうして「STU48号」はそのまま引退するのかと思いきや、船名を「みかさ」に変更してRORO船へと復帰。早速、陸上自衛隊第14旅団の車両輸送に活用されました。
同船は全長77.8m、全幅12.50mで、船内には8m換算で車両12台を積載できます。前述したように、もともと伊是名村営フェリーとして小回りの利く貨客船として建造されたため、タグボートなしで出入港できる能力を持っており、大規模な設備が整っていない岸壁でも接岸し車両の積み降ろしをすることが可能でした。
そのような性能の船ゆえに、九州から南西諸島への機材輸送にはちょうど良いスペックの船だったといえるでしょう。なお、「STU48号」時代にも陸上自衛隊第8師団などの車両を運んでいます。
「みかさ」は、2022年に陸上自衛隊が実施した「鎮西演習」では、16式機動戦闘車などを別府港まで輸送。今年(2023年)に入ってからも、4月に北朝鮮による軍事偵察衛星の打ち上げに備えて「破壊措置準備命令」が発令された際には、与那国島へ向かう航空自衛隊の地対空誘導弾「パトリオットPAC3」や、陸上自衛隊の車両を運んでいます。
ちなみに、「みかさ」ですが、劇場船からRORO船に復帰するにあたって内装工事が行われています。これにより、広く吹き抜けのようになっていたブリッジ後部の客室天井は低くなったほか、階段状に客席が置かれていた劇場部分はフラットな大部屋となっています。
壱岐・対馬フェリーは通常であれば、「フェリーつばさ」(1585総トン)を博多~壱岐・対馬航路に投入していますが、同船がドック入りで運航から離れた場合は、代船で「みかさ」を用いるようです。
そのため、今後も「STU48号」改め「みかさ」に乗船できるかもしれません。今後の予定は何とも言えないものの、もしチャンスがあるようなら、かつて話題になった劇場船の現在の姿を見に、足を運んでみてはいかがでしょうか。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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