「鉄道ダメならバス」誰が運転するんだ!「バスがダメならタクシー」の幻想 乗務員不足もう限界
デマンド交通に多い「朝9時以降スタート」の意味
行政主導のコミュニティバスやデマンド交通は、一定の収入が常時確保できる「おいしい」一面はありつつも、本来の乗合バスや一般乗用の仕事を削ってまでできるものではありません。
デマンド交通は運行事業者との調整により朝9時以降のスタートというところが結構あります。これは、朝は一般のタクシー需要がそれなりにあるので、限られた乗務員を別の仕事には回せないということなのです。
地方では小中学校のスクールバスなどもタクシー事業者(あるいはバス事業者)に委託していますから、スクールバスの時間はデマンド交通やコミュニティバスに乗務員が回せないといった事情もあります。ですから「バスがダメならデマンドタクシー」などと言っても、タクシーの方も対応できない場合が多いのです。
人手が足りなくて必要な地域の足が確保できないとすれば、それはすでに一民間事業者の問題ではなく、地域全体の課題である――という認識のもと、山口市では4年前からバス・タクシー事業者と共同で「運転士体験会&就業説明会」を、筆者が副委員長を務める市の公共交通委員会主催で実施しています。
これで抜本的な効果がある(急速に採用が増える)というものではないにしろ、市民にも危機的な状況を知ってもらい、みんなの力で運転者を確保し公共交通を育てようというムードづくりのためには必要な動きと捉えています。少しずつ、Uターンして地元で働きたいといった動機の参加者も増えているようです。北海道など他の地域でも類似の動きが出ています。
自動運転やその先の無人運転で運転者が必要なくなるにはまだ10年以上を要すると考えられ、喫緊の運転者不足には間に合わない中、人の生活を支え、地域で働けるバス・タクシードライバーの誇りを広く伝える必要性を感じます。
【了】
Writer: 鈴木文彦(交通ジャーナリスト)
1956年山梨県生まれ。フリーの交通ジャーナリストとしてバス・鉄道に関する論文や記事を多数執筆。国土交通省や自治体、バス事業者のアドバイザーや委員も務める。著書に『日本のバス~100年のあゆみとこれから』など。
伝えるべきは待遇向上じゃないんですか?
誇りとか言ってるうちは無理
そしてそんなことが言えるということはまだまだ余裕があるということ