横田基地の上空は本当に“アメリカ”? 広大な「横田空域」を民間定期便が毎日横断できるワケ
羽田空港発着で使っているかも?
もう1つの例は2020年3月29日から運用が始まった新しい羽田空港への進入ルートです。このルートは南風時の午後3時から7時までに限定して適用されるものですが、横田空域を通過して都心上空経由で羽田空港のA滑走路(RWY16R)もしくはC滑走路(RWY16L)へ進入します。
このルートを設定するにあたっては、国土交通省と在日米軍との間で協議が行われ、横田空域の一部をクラスC空域とすることで対処することになりました。クラスC空域とは、計器飛行方式でも有視界飛行方式でも事前の許可がないと飛行ができない空域であることを意味しています。
こうして見てみると、横田空域といっても日本のほかの空域、自衛隊はもちろん国土交通省が管理する空域と何ら変わらないことがわかるでしょう。
では、なぜ横田空域が設けられたのでしょうか。それは関東平野の南西の隅にあたる地域に多くの軍用飛行場が密集しているからです。南側から海上自衛隊厚木航空基地(日米共用)、陸上自衛隊立川駐屯地(立川飛行場)、航空自衛隊入間基地が配置されています。この中で立川駐屯地と在日米軍の横田基地は隣り合っているといっても良いほどです。
それぞれの飛行場への出発コースと進入コースは異なる高度で交差しています。そのため、一元的に広い空域をレーダーでモニターすることで、航空機どうしの間隔を確保して空の安全を維持しているのです。関東平野は人口密集地域でもあるので、アメリカ空軍では空中衝突を絶対に起こさないよう、横田空域のレーダーサービスを356日、24時間体制で提供しています。
実は、横田空域というエリアは在日米軍が「交通整理」をしているだけで、占有したり、日本機の飛行を制限したりしている空域ではないということが、これでわかるでしょう。
【了】
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事
ついでにこの際だから羽田への陸上からの進入ルートは危ないからやめてしまえ