念願のマイ機関車「運転して帰ってね」!? 鉄道車両"個人所有"の喜びと苦悩「歴史を預かる」自負とは

親子二人三脚で20年以上管理

 優雅な趣味に思えますが、苦労は絶えません。車輪配置0-6-0と小ぶりながらも牽引力があるため、使っていない時はGWSRに貸し出し、貨車の入れ替え作業に使わせています。ですが、GWSRから支払われるレンタル費(1時間11~12ポンド)に対して、修理コストは赤字。つい最近も、ローラーベアリングの修理に5000ポンド(90万円強)かかりました。修理費用を募るということも可能ですが、英国の鉄道雑誌『Heritage Railway』のライター、オーウェン・ヘイワードさんに取材したところ「心情的に、個人所有の機関車には寄付が集まりにくい」のだそう。

 お金だけでなく膨大な時間もかかります。1959年に英国の工業都市シェフィールドのヨークシャー・エンジン社で製造された同機は、同型で現存する最後の一機のため、部品の在庫がもうありません。紡績機などの修理工だった父親のビルさんが独学で機関車の構造を学び、類似の代替品などを地道に探し、どうにか走れる状態を保ってきました。

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親子で協力して機関車を保存してきた(本人より提供)。

 ポールさんにとって鉄道は物心ついた時から父・ビルさんとの共通の趣味でした。成長とともに、鉄道模型、写真撮影、乗り鉄、機関車を共同所有と形を変えつつ、常に二人を繋いできた絆だったのです。

 残念ながら、2021年末に2760号機は再び故障し、2022年2月には父・ビルさんも亡くなってしまいました。一人では管理しきれなくなったポールさんは熟慮を重ねた末、今年の1月、機関車コレクターの知人に2760号機の修理を託し、修理完成から一年後にそのコレクターに譲るという契約を交わしました。大切な愛機の修理成功は、別れのカウントダウンが始まる瞬間でもあるのです。

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