「74式戦車」もうすぐ退役 丸っこい戦車はもう出ないのか? カクカクへ変わった合理的な理由

戦車の砲塔形状の説明で、「角張った形」や「お椀型」といわれることがあります。この形状の違いは、開発時のデザインセンスだけでない、戦車にとっては重要な性能のひとつである防御力が関係しています。

被弾しやすい砲塔だから絶え間なく進化

 現役最古参の国産戦車である74式戦車が、陸上自衛隊からもうすぐ姿を消そうとしています。退役予定は2023年度末で、来年度以降は陸上自衛隊が運用する戦車は90式戦車と10式戦車の2種類になる予定です。

 今後も現役で残るこの2車種と、退役目前の74式戦車を見比べると、砲塔形状に明確な違いがあることがわかります。それは、74式戦車の砲塔が丸みを帯びた継ぎ目のない曲面形状なのに対して、90式戦車や10式戦車のものは角張っていて溶接跡がところどころに見られる点です。

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滑らかな曲面形状の砲塔が特徴の74式戦車(画像:陸上自衛隊)。

 これは各々の作り方の違いに起因するもので、74式戦車の砲塔は、溶かした鉄を鋳型に流し込む鋳造の一体成型構造だからであり、90式戦車や10式戦車の砲塔は防弾鋼板を溶接でつなぎ合わせて作っているからです。とはいえ、この溶接を用いた戦車の作り方は最近誕生したものなのかというとそうではなく、第2次世界大戦中の戦車にも用いられたものです。

 そもそも初期の戦車は、切り出した鋼板をボルトやリベットで止めて作っていました。しかし、これだとたとえ飛んできた砲弾を鋼板がはじいたとしても、ぶつかった衝撃でボルトやリベットの軸がちぎれ、その破片が車内を飛び回って乗員を傷つける恐れが生じました。

 そこで、ボルトやリベットを用いない生産方法として、鋼板同士を溶接でつなぎ合わせるようになりました。しかし溶接は、鋼板が薄い場合は問題ありませんが、厚くなればなるほど技術的に難しくなり、なおかつ鋼板がぶ厚ければそのぶん溶かす部位の鉄も増え、高電圧大電力が必要になり、生産の難易度が上がります。

 よって、ぶ厚い鋼板を用いた溶接構造の戦車を作れたのは、高い技術力を持つ国に限られました。一方、鋳造の場合は、戦車の砲塔のような大きさだと、それなりの規模の工作機械と工場が必要ですが、製造ラインさえ整えられれば溶接ほどの高い技術力がなくとも生産が可能です。

 また継ぎ目のない一体構造というのは、割れや破断を防げます。さらに戦車の防御力の概念として、「弾に貫かれない」だけでなく「弾をはじく(滑らせる)」というものも考慮されるようになりました。このことを「被弾経始(ひだんけいし)」といいます。

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コメント

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2件のコメント

  1. ウクライナ戦争でようやく発覚した装輪装甲車は戦車の代替にはならないということを踏まえると
    74式でもスクラップにせずモスボール保管したほうが良いと思うんだよな
    本格的な機甲戦が国内で起こる確率は低いけど、万一を考えて廃棄しないで欲しい

  2. ERAが自衛隊で不採用というのは正確ではない