悲運すぎる高性能機? F-20「タイガーシャーク」わずか3機で終わったワケ しかし日本で超有名に

「エンジン単発でも安心だから!」のワケ

 F-20戦闘機は、基本構造はF-5E「タイガーII」と一緒であり、そのモデルチェンジといえるものでした。空力的にはブラッシュアップが図れており、レーダー火器管制装置は小型で高性能な新型に換装。エンジンは小型のJ85ターボジェット双発から高出力なF404ターボファン単発に変更されています。この改装でエンジン出力は約60%増加しましたが、ターボジェットエンジン2基という安全性を捨ててまでターボファン単発へと舵を切ったのは、F404が持つ高い信頼性と操作性にありました。

 それが視覚的によくわかる描写が、1986年に公開された映画『トップガン』にあります。劇中では、俳優トム・クルーズ演じる主人公「マーヴェリック」が操縦するF-14のジェットエンジンが吸気の乱れによりエンジントラブルを起こして停止する事故が起きます。この場面はF-14が搭載していたTF30エンジンに発生しやすいとされていた事象を再現したものでした。

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1986年4月、カリフォルニア州チャイナレイク海軍兵器センターで一般公開されたF-20「タイガーシャーク」3号機(細谷泰正撮影)。

 当時のジェットエンジンは、スロットルの急な操作や吸気の乱れが原因で、「コンプレッサーストール」と呼ばれる異常燃焼に起因する出力低下のトラブルを起こす欠点を抱えていました。それを解決するために開発されたのが「FADEC」(Fully Authorized Digital Engine Control)と呼ばれるエンジン自動制御装置です。FADECはフライバイワイヤの概念をエンジン制御に取り入れたものと言えます。

 フライバイワイヤは操縦桿からの入力をコンピューターが補正して制御舵面を動かしているのに対し、FADECはスロットルレバーの入力を補正してエンジンを制御する仕組みです。FADECによりF404は最もストールしにくい戦闘機用エンジンとなったことで、ノースロップはこのエンジンならば、1基だけでも十分な安全性が担保できると判断したのです。

 こうして、大幅に性能向上が図られた「タイガーシャーク」1号機は、F-5Gとして1982年8月30日に初飛行します。1号機はF-5Eのキャノピーを使用しているのが外形上の特徴で、初飛行で音速に達するなど、さっそく高性能ぶりを見せつけました。

 なお、この1号機は飛行試験が行われていたカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で早々と一般公開されています。それは初飛行からわずか2か月後の10月24日の基地公開日でのこと。そのときは、チェイス機として使用されていたノースロップ所有のF-5Fと並んで展示されました。

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